三十九話 そして一つの線になりまた拡がっていく
引きこもりをどうにかしようと決めた。
取り合えず体を綺麗にしてもらった。
あと、お裁縫した。
そして三日が過ぎた。
ようやくツバーシャはもうやだ言わなくなった。
そろそろ袋を被せてもいいんじゃあないかな。
と言うわけで袋被せてみた。
「どうだいツバーシャ?」
「悪くないわ」
「おお、意思疏通が可能になったか」
「フン……」
まだ声に張りはないし、体はぷるぷるしているけれど大分良くなったな。
かなりイカした感じのファッションだけど、頼むからシノは余計なことを言わないでおくれよ。
「お風呂に入りたい」
「ああ、いっぱい入っていいぞ。ラビ、シノ。お風呂の準備をしてあげて」
「分かったのです! いっぱい沸かすのです!」
ああいや、お湯の量は普通でいいんだが。
伝える前にシノ引っ張って行ってしまった。
「別に元の姿に戻って火を吹いて沸かすから良いわ」
「それはダメだ」
「ひっ!」
「ああ、いや、すまん。あの水が無くなると城なしが落ちてしまうんだ。風呂を沸かすから人の姿で入っておくれ」
いかんいかん。
ちょっと強めにいってしまった。
やさーしく、やさーしくしないと。
「わ、分かったわ」
「ああ、うん」
触れれば壊れてしまいそうだ。
客観的に見るとこんな感じなんだなあ。
しかし、困った。
話題がない。
取り合えず、働けとか言うのは地雷になると言うのは分かる──。
いや、地雷にならんわ!
飛竜は定職に就かんだろう!
別に無職でも許されるじゃん!
くそっ。
仲間だと思っていたのに。
「まあ、風呂に入るなら外でるよな? 登れるか? 手を貸そうか?」
「バカにしないで」
「そうか」
世話焼きすぎたかな。
傷つけない為の微妙なバランスが難しいぜ。
でも、何だか危なっかしいなあ。
ずるっ、ドシャッ。
「……」
「……」
くっ。
登れなかったか。
多分ここはあれだ。
黙って手を伸ばせばいいはずだ!
頼む!
掴んでくれ。
「ありがとう……」
「えっ?」
「何でもないわ」
声ちっちゃくて聞こえなかった。
何か大切な言葉を聞き逃した気がする。
でも、手は握ってくれたわ。
お風呂までエスコートしてしんぜよう。
で、どうしてこうなるんだ。
ツバーシャがお手て放してくれない。
ちっちゃくて可愛い手なんだけど、そこは飛竜少女。
握る力は強い。
でもあなた入浴中何ですけど。
しかも、頭には袋を被ったまんまだし。
シュールな光景この上ないわ。
「ふぅ……。お風呂は良いわね」
「そりゃあ良かった。でも、何でそんなに風呂が好きなんだ? 城なし沸かしたのも好きだからだろう?」
「寒いと、体が言うこと聞かなくなるのよ」
何だそりゃ。
って、ああ。
飛竜、竜、ハ虫類っぽい、変温動物。
そういう事?
いやいや。
「でも、火を吹けるじゃないか」
「熱すぎるじゃない。それにお湯の方が体に染み渡るわ」
「なるほど」
じゃあ、何で寒いところにおったのだ。
とも思うが、こっちは聞けないな。
色々あったぽい思わせ振りな事を言っていたし。
それにしても、いつまで手を繋いでいれば良いのだろう。
さりげなく、お手て離せないもんだろうか。
温まって緊張も溶けただろう。
すっと、空を撫でる感じで抜けんものだろうか。
すっ。
ミシッ!
OH!
「お願い、離さないで。初めてなのよ」
「お、おう」
何が?
お手て繋ぐのが?
そんなまさか。
いやでも、飛竜にはお手てないわ。
しっかし、トイレに行きたくなったらどうすんだこれ。
あっ、考えたら行きたくなってきた。
「でも、俺、トイレいきたい」
「ここですれば良いじゃない……。私は気にしないわ」
「俺が気にするわ」
まあ、何てワイルディッシュな事を言ってくれるのかしら。
そりゃ、あーたは野生の飛竜何でしょうが。
どの辺までが飛竜でどの辺までが人間なのか分からんなあ。
「ふぅ……。冗談よ。穴に戻るまででいいから」
「冗談なのかよ……。いや、待って、突然立ち上がらないでっ」
分かりにくいわあ。
ともあれ、穴に戻ると解放してくれた。
「それじゃあ、飯どきになったら、また来るからな」
「そう……」
「あ、もう少しここにいようか?」
「一人がいいわ」
「そうか」
どっか失敗したかな?
いや、考えすぎも、構いすぎも良くないか。
ほどほどにしておこう。
「ご主人さま! お手てを出して欲しいのです!」
穴から戻るなりラビがやって来てそう催促された。
何だろう?
何かくれるんだろうか?
ぎゅっ。
「ラビもお手て繋いで見たかったのです」
「ああ、そういう事か」
「ふふふ。もう離さないのです!」
大変かわいらしい。
そう、大変かわいらしいのだが、今は差し迫った状況にあるのだ。
トイレいきたい。
「すまんラビ。思う存分お手てを繋いでいてあげたいんだが、トイレに行きたいんだ。ちょっとヤバイ」
「漏らしてもラビは気にしないのです」
「いや、待って。確かに似たようなやらとりツバーシャとしたけどそこまで真似しなくていいよ!? 何かより、とんでも無いことになってるし!」
「さあ、ブリッジして城なしのお外に飛ばすのです!」
「トイレ使うし! もしかして、根に持ってる?」
「ふふふ。冗談なのです」
何だ冗談か。
そこまでまねっこなのね。
ラビの口から冗談何て初めて聞いたわ。
ツバーシャの影響は強いな。
それにしても、ツバーシャが来てから大変だったな。
今も、ちとやっかいな事にはなっているけども。
ツバーシャの襲来で色々振り回されたけどしばらくは平和な日々が続きそうだ。
怪我が治るまでは地上に降りられないし、そうそう、空の上にやってくる奴がいるとも思えん。
ラビ、シノ、ツバーシャ。
個性的な彼女たちとこれからも何気ない日常のなかでやりたいこと思い付いた事を端からやって見たりして、俺は幸せを見付けて行くのだろう。
そう。
ずっと、ずっと──。
三章城なしまとめ
施設
・かまど
・トイレ
・忍者ハウス
・壺ぶろ
・コンポストnew!
家畜、魚
・茶色いヒヨコ
・ヤマメ
・サケnew!
畑など
・さつま芋の壺畑
・大豆の壺畑
・米の壺田んぼ
・シイタケ
果樹など
・バナナ
・サルナシ
・ヤマグリ
・竹
その他
・水源
・川:トイレ直行
・川:池通過
・川:サケ用new!
・海
・池




