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三十四話 縁の下の支配者

 食料が荒らされた。

 迷いこんだ女の子を見付けた。

 名前がほしいと言うので名前を付けた。



 しかし、不思議な子だったな。

 翼もないのにこんなところまでやってくるなんてなあ。

 魔法かな?

 【放て】をモノにするためにこれしか使ってこなかったから、詳しい訳じゃあ無いんだよなあ。


「にこぉ」


「お、おう。ラビ、口元しか笑えてないぞ? 俺は何か悪いことしたのか? まったく見に覚えが無いんだが」


「むぅ。やっぱり笑顔は難しいのです」


 笑顔だったのか。

 てっきり、何かラビの怒りに触れたか、もしくはとてつもなく悪どいことを考えているのかとおもったわ。

 しかし、何でまたそんなことを。


「ご主人さまはあの子の事でいっぱいなのです。おシノちゃんの時もそうだったのです」


「そんな事は──。いや、ウソは良くないな。すまんラビ。ラビの言う通り、あの子の事で今はいっぱいだよ」


「だから笑顔でご主人さまの気を引こうとしたのです」


 なるほど。

 つまりはヤキモチか。

 愛情が足らんのかなあ。


「よーし、ナデナデしてやろう」


「必要ないのです」


「な、何だと!?」


 これには動揺せざるを得ない。

 一体どうしてしまったんだ。

 それじゃあ、ラビに対する俺の存在意義が無くなってしまうじゃないか。


「ご主人さまはケガをしているからナデナデもラビがやるのです」


「セルフナデナデか。新しいな」


「ラビがラビの頭を撫でるわけではないのですよ!?」


「えっ、じゃあ俺がナデナデされるの?」


「そうなのです。そーれ 、わしわしわしわしわ!」


 わしわしじゃなくて、しわしわになっとる。

 まあ嫌じゃあないけど変な気分だ。



「ご主人さま。そろそろお腹が空いたのです」


「ん? それじゃあ、夕食にしようか」


「作るのはラビたちがやるので作り方を教えて欲しいのです」


 それじゃあお願いしようか。

 鍋の残りに新しく材料追加するだけでいいかな?

 どんどん濃縮されて旨くなる気がするし。

 でも、それだけじゃつまらないな。

 ラビが摘まみ食いした鳥ハムも少し加えようか。


「よし、晩ごはんは鍋にしようか」


「じゃあ、おシノちゃんを探してくるのです」


「なら、ついでにツバーシャも探しておいておくれ」


「お手伝いに加えるのです?」


「いやいや、仲間になった訳じゃないからお客さんだよ。食い荒らされたら叶わんから、ご飯は出してあげないと」


「なるほど。わかったのです!」


 嬉しそうだな。

 仲間になった訳じゃあない=ご主人さまの独占率かわらないか。



 全部任せるのは忍びないな。

 シイタケ位はむしってこようか。

 あそこにはサルナシの小枝を隠してあるからシノには頼めないし。

 かといってラビにばかり任せていたら勘ぐられそうだ。


 何て考えながら縁の下にやってきた訳だが。


「な、なにしに来たのよ」


「いや、シイタケむしりに来ただけなんだが。むしろツバーシャがここで何をしているんだよ」


「フン。見れば分かるでしょう。鋭気を養ってるのよ」


 いや、わかんねえよ。

 どこの世に縁の下で鋭気を養ってる女の子がいるって言うんだ。

 怖すぎるわそんな世界。

 でもそれにしては……。


「何で震えているんだ? そんなに俺が恐いか? 今は俺も手負いだ。怯えなくても大したことは出来やしないさ」


「わ、私が震えてる? 恐い? 怯えてる!? バカにしないでよ! 私は空の支配者よ? この

震えは、そう、怒りに震えているのよ」


「うええ? 震えるほど怒られるほど俺なんかしたの?」


「フン!」


 ああ、そっぽ向いてしまった。

 ウチの子にしたいなあ。

 手を伸ばしたら噛みつかれてしまいそうだけど。


「まあ、そんな事を言いに来た訳じゃあ無いんだ。良かったら晩ごはん一緒にどうかなって、誘いに来たんだ」


「お断りよ。あんたなんかの施しは受けないわ。自分で捕って食べるわよ」


「そう言うとは思ったよ。でも、ここにあるものは全て俺が。いや、俺たちが捕ってきたモノだ。何を捕っても結局は施しを受けているのと変わらないんじゃあないか?」


 言ってみて気が付いたけど、全部本当に俺たちが捕ってきて作り上げたんだよなあ。

 ちょっと感慨深いし嘘みたいだ。

 何だか不思議な感じがする。


「もうっ、分かったわよ。一緒に食べるわ。でも、勘違いしないで。私は飼い慣らされたりしない。見世物にされたり、牧場で飼育される気は無いわ」


「えっ、何言ってるんだ? 何? 異世界ってそこまで荒んでるの? 半端無さすぎるだろう」


「フン。とぼけたって無駄よ。ちゃんと分かってるんだから」


 被害妄想も良いとこだが……。

 ラビの件を考えるとない話でもないよなあ。

 奴隷が既にそれに近いものだし、あっても不思議ではない。

 あってほしくは無いが。


「そんな気は無いから安心してくれ。俺にそんな趣味は無いよ」


「じゃあ、あの子に付けた首輪と鎖は何なのよ? お洒落にしてはやりすぎじゃないかしら」


「あー……。あれはだな」


 いや、そんなに睨まないでくれよ。

 しかし、すっかりラビに付いてる首輪に違和感なんて覚えなくなっていたわ。

 そりゃ、そうだよな。

 奴隷のご主人さまにしか見えないわな。

 いや、奴隷のご主人さま何だけどややこしいな。


「ご主人さまー? どこにいるのですー?」


 ああ、突然姿を消したからラビが俺を探している。

 早いとこ出ていかないと心配させてしまう。


「ご主人さまねえ?」


「ぐうの音も出ないな。信じてくれとは言わないけれど言わせてくれ。ラビは奴隷商人に騙されているところを助けて保護したんだ」


「ふーん?」


 くそう。

 まるで信用されてないな。

 まっとうに生きてきたつもりだが自信が無くなってくる。


「主さまー? どこなのじゃー?」


 シノもか。


「主さまはどう言うことなのかしら?」


「シノは人に追い詰められて崖から飛び降りたところを助けたんだ」


「そう。微塵も信じられないわ」


 ですよねー?

 そんな都合よく人のピンチに駆けつけて一緒に住んでますとか都合良すぎるわな。

 いや、しかし、荒んでいるこの異世界なら、そう珍しい事でも無いんじゃなかろうか?

 まあ、だからこそ加害者であると疑うんかな。


「いいさ。飯にしよう。俺が行かないと飯が出来上がらない。肩を貸そう」


「いらないわ。肩を借りても自分の体を支えられないもの」


「そりゃ、大変だな。一体どうしてそんな怪我を?」


「フン!」


 言いたくないか。

 別にいいけど。

 にしても、ホフク前進で動き回るから大分汚れてしまっているな。

 このまま部屋に上がって欲しくはないな。


「その服洗濯してあげようか?」


「はっ? 何考えてるのよ。あんたなんかに服を渡せる分けないでしょう? それに洗ってる間は裸でいろって言うの?」


「ああ、悪かった悪かった。そう吠えないでくれよ」


 確かにデリカシーのない発言だったわ。

 余計なこと言うもんじゃあないな。

 体をふく布とお湯を用意しますかね。

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