三百一話 魔女狩りなのです!?
三百二話について検討した結果一話で結ぶのは困難、更にはキャスト不足と見て大規模な加筆修正を行い十七章を13話から26話編成でまとめる方向で進めています。進捗状況につきましては活動報告へ上げていきますのでそちらをご覧ください。
お薬もらった。
町長の息子エーゼルが現れた。
エーゼルはどこかへ行ってしまった。
「しかしなんだってエーゼルはあそこまでレーテを追い出そうとするんだ?」
「ワシのせいだな。あれの両親もレーテルンの両親と同じようにこの町にはいない。だからワシひとりで育てた──」
町長宅はとなりの家だそうだ。
で、エーゼルとレーテの二人を育てた町長だがどうしてもレーテの方をひいきしてしまったらしい。
そりゃあ、いつも熱をだして咳をしているレーテをひいきしてしまうのは仕方がないことだろう。
だが、エーゼルはそれが気に入らなかった。
「──だからエーゼルはレーテルンを昔からよく思っていないんだ」
「ううん、おじいちゃんのせいじゃない。私が悪いの」
「バカをいうな。レーテルンに非があるものか」
家庭の事情と言うやつか。
これはまた厄介さに拍車が掛かっているな。
なんて思い更けていると。
ガッシャーン……!
窓の割れた音がした。
「おいおい、いきなりか」
幸いこの部屋の窓が割れたわけじゃあない。
そっと勘づかれ無いように外を覗くと町の人たちに囲まれていた。
エーゼルが集めてきたのだろう。
手にはそれぞれ石を握っている。
『町から出て行けー!』
外からはそんな言葉が聞こえてくる。
病気で喉を痛めているのによく大声を出せるもんだ。
しかし、こうなると立て籠るのはよろしくないな。
「中は危険だ。ここから逃げ出さないとまずい」
投石程度ならまだどうにかなるが火を放たれたら最悪だ。
ウエストポーチにレーテを入れて逃げたいところだが──。
「あの、私外に出て町の人たちと話し合ってきます」
──まあ、一度追い出されたのに町に残りたいと言うぐらいだから簡単に逃げ出そうとはしないわな。
「レーテルン。志は立派だがお前がどうにかなってしまったらこの町から出ていくのと結果は変わらん。考え直すんだ」
「でも、なにもせず逃げ出すなんて私にはできないの……」
「レーテルン……」
レーテはそれだけ言って立ち上がると家の外に向かって歩き出した。
「愚かだわ……」
「お、おいツバーシャ!? レーテになんてことを言うんだ」
ずっと、静かだったのに突然とんでも無いことを言いおる。
「何を言っているの? レーテではなくて町の人の方よ……」
「ああ、そっちか」
まあ、どっちにしても驚きには変わりがない。
ツバーシャが町の人に対して怒っている……?
何かレーテに惹かれる物でも見付けたんだろうか。
「行かないの……?」
「ああ、そうだな。ひとりであの群れの中にレーテを放り込むわけにはいかないわな」
「フン……!」
レーテの家からでると弧を書くように並んだ町の人の視線が俺たちに突き刺さる。
「うっ、こりゃ視線が厳しいな……」
幸い町の人と多少距離があるので即座にノックアウトとはならないがあまり長い間耐えられそうにない。
「出て行けー!」
辺りはそんな言葉を中心にガヤガヤと騒がしい。
げほげほと咳き込みながら集まるあたり狂気を感じる。
「あの、みなさん聞いてください……!」
それでも、レーテは町の人に訴える。
だが多勢に無勢──。
「うるせえ! 魔女の言葉なんか聞けるか!」
「良いから出てけー!」
──レーテの言葉はかき消される。
人は必ずしも合理的な思考を行えるわけではない。
相手が間違っていると思い込めばその考えを変えるのは自分でも他人でも難しい。
さらに悪いことにその結果自分が正しい、だから他人もそうすべきだと考え相手に強制し、さらには煽動する。
そうして行き着く先がパニックだ。
「ですから、私は……!」
レーテの声は届かない。
それでも何度でも声をあげようとする。
もう一方的に言葉で押し潰されるレーテを見ているのは辛い。
レーテの意思など無視して連れ去ってしまおうか。
「私がやるわ……」
「えっ? やるって何を?」
「焼き殺すわ……」
なんて恐ろしいことを言い出すんだ。
「ちょ、ちょっと待てツバーシャ!」
「ルググ……。ルガアアアアアア!」
「えっ? ツバーシャさんが飛竜に!?」
レーテの驚きもよそのこと。
ゴオオオッ……!
ツバーシャが火を吹いた。
うわあ。
まさか本当に火を吐くとは……。
ただそれは町の人たちを避けて放たれた。
「フン……!」
ツバーシャの鼻息は荒い。
だが次はやる。
そんな意思を感じる。
それをレーテも感じたのか飛竜の姿に戻ったツバーシャの前に両手を広げて待ったをかけた。
「や、やめてくださいツバーシャさん。私はこの町の人たちを救いたいの。傷つけたいわけじゃないの!」
「ルググ……」
レーテはすごい。
なぜ自分を傷つけようとする人まで助けようなどと思えるのか。
俺だってツバーシャの様に焼き殺そうとしないまでもどうにかして町の人たちを救おうなどとは思えない。
本人は免疫力を奪ってしまった罪悪感からそうしていると思っているみたいだが、それでもレーテの力は尚有り余る恩恵には違いない。
世界にはどれだけ健康であらんと願う人がいることか。
それをレーテだってわからないわけじゃないだろう。
それでもレーテは己を省みず町の人を救うために立ち上がるのだ。
英雄なんてのはレーテの様な勇者を指すに違いない。
たが──。
「う、うわああああああ!」
ひゅん。
ゴッ……。
「あうっ……」
──そんなレーテに石を投げつけるどうしようもないやつがいた。
贔屓目にみるなら熱と恐怖でどうにかなってしまっていたのかも知れない。
だが、怒れる相手がそんな事情を踏まえるわけがない。
ツバーシャが吠える。
「ルガアアアアアア!」
いけない。
ツバーシャはやるつもりだ。
「ツバーシャやめろ! レーテはそんなのは望んでいない!」
「ルググ……」
「ツバーシャはなんの為にこの人たちを焼くつもりなんだ!?」
「っ……。ルグググググっ……!」
迷えるツバーシャ。
そして──。
「ルガアアアアアア!」
ゴオオオッ……!
──寸でのところで踏みとどまったツバーシャは空に向かって炎を吐くことでなんとか自制心を保っている。
「もう俺がレーテを傷つけさせないから。ここは耐えてくれ」
さっきの一発は完全に想定外だった。
ツバーシャから庇ってる最中のレーテに石を投げつけるとか予想できるわけがない。
だが二度とやらせない。
俺はいつでもレーテを庇える位置に立った。
「見える……!」
もちろん【風見鶏】を使うのも忘れない。
翼を隠す布も取っ払って準備は万端だ。
「えっ? 見える? それにその翼は……?」
「ん? いやこっちの話。翼も今は気にしないでくれ。ともかくこれで誰にも邪魔はさせない。レーテは伝えたいことがあるんだろう?」
「あっ……。はい!」
ツバーシャの雄叫びで場は静かだ。
ほとんどが腰を抜かして地面に尻を付けるか足がすくんで動けなくなっている。
「私は病気をバラまいているわけではないんです。私は──」
レーテは語った。
自分が何者なのか。
なぜ町の人が病気になったのか。
その声は淀みなく強い意思を感じさせる。
これが演説いわゆる演説と呼ばれるものか。
レーテには政治家が向いているかもしれない。
俺はレーテの言葉に耳を傾けながらも辺りを警戒した。
が、町の人も静かに聞いていたので心配は杞憂に終わる。
「──だから私はこの町を離れるわけにはいかないんです!」
レーテが言葉を終えると場はしんと静かになった。
果たしてレーテの言葉は届いただろうか?




