二十八話 城なしの危機
雪国に出た。
とり肉を手に入れた。
なんと城なしが荒らされてた。
割れた壺の片付けをしていると、ラビとシノが体調不良を訴えてきた。
「何だかいつもより寒い気がするのです」
「そうじゃな。心なしか息苦しい気がするのう」
「何だ? 二人とも風邪でもひいたのか?」
やっぱり今日はお鍋にしよう。
昆布とシイタケと鶏肉。
ふふっ。
からだが温まりそうだ。
今日の晩ご飯が決まったので早速かまどに向かうと、もうひとつの異変に気がついた。
「あれ、川の水が止まってる?」
「主さま。池に流れる水も、池から流れる水も止まっているのじゃ」
「ご主人さま! まん中のお水が温泉になっているのです!」
一体これはどう言うことだ?
城なしが俺たちのために水源を温めて温泉に?
いや、この焦げたような後は──。
「城なしを荒らしたやつが火でも吹いて温泉にしたのか?」
「なるほどのう。それで水がせき止められているのじゃな」
「血が付いているのです!」
うわ、水源がずいぶん汚れてしまっているな。
だいぶ水も減っている。
怪我したから温泉にして治療でもしていたのか。
こんなに水が減るなんて、どんなデカさ何だよ。
ん?
もしかして、ラビやシノが体調不良を訴えたのはこれのせいか?
「ご、ご主人さま。集めたゆきをここに入れて何をするのです?」
「いや、この水は城なしの機能に関わってるんじゃ無いかと思って」
「こんこんと水が湧いておるから、放っておけばまた元に戻るんじゃないかのう?」
「そうかも知れないが試してみる価値はあると思う」
城なしが以前作ったミニチュアには水源の上に城が建っていた。
これが気になる。
この水源は城なしの弱点なんじゃないか?
それを守る為に水源の上に城を作りたかったんじゃ無いか?
城なしにとってこの水は無くてはならないモノなのかも知れない。
「全然足りないな。何度か往復しなきゃダメだな」
「しかし、もう日が暮れて来たのじゃ」
「嫌な予感がするんだ。今日水を足さないと大変な事になる気がする」
今日のお鍋は延期だ。
久しぶりの徹夜になるかもな。
「すまんな。とり肉はまた今度だ。俺は城なしを助けないといけない」
「バナナで我慢するのです。ご主人さま、無理はしないで下さいね?」
「もう、来ないとは思うけど、何か来たら隠れておくれ」
「わぁは忍者だから心得があるからのう。ラビのことは任せるのじゃ」
頼もしい。
忍者なら任せられるな。
ラビと一緒に全力で忍んで欲しい。
さて、それじゃあ、久し振りに本気で頑張りますかね。
「それじゃあ行ってくる!」
「いってらっしゃいなのです!」
「無理はほどほどにするのじゃぞ?」
それはどうだろう。
今回は無理をしなくちゃいけない気がする。
俺はラビとシノに見送られながら、空に飛び立った。
あー……。
城なしの高度も落ちているのか。
いつもより、雲が近い。
やはり、あの水源は城なしにとって重要なモノなんだな。
おっ、川があるな。
白い大地を割って流れとるから見つけやすいな。
あそこの水を汲むか。
俺は近くの飛び立てそうな崖の近くに着地した。
水を汲むのは簡単で良い。
ウエストポーチの口を開けて川に突っ込むだけだからな。
シノの風呂敷も借りてきたからこれにも入れていかないと。
あっ、何か魚入った!
ちょっと嬉しい。
後で見てみよう。
でも今は急がないと。
俺は川と城なしを4往復ほどした。
ふぅ……。
水がいっぱいになったな。
結局徹夜するほどじゃあ無かったな。
魚が結構捕れたけど、もう真っ暗だし確認するのは明日にして今日は寝よう。
「むあ……。ご主人さま。もう、終わったのです……?」
「ああ。終ったよ。だからおやすみ」
真っ暗なのにまだ起きていたのか。
また心配させてしまったな。
俺はラビが眠るまで頭をナデナデしてやった。
「主さま。魚の臭いがするのじゃ」
「うん。水を汲んでいたら魚が捕れた。明日一緒に確認しておくれ」
「い、異国の魚はちと自信がないのじゃ」
そうだった。
魚に詳しいからシノに聞けば良いと思ったのだが、ここ異国だった。
「まあ、食べられるか食べられないかぐらいは分かるだろうさ」
「そうじゃな。今日はもう遅いし明日じゃな」
4往復とは言え、結構な疲労なので直ぐに眠てしまった。
「チュンチュン……」
朝か。
城なしの様子が気になる。
早く見てみよう。
「ご主人さまが早起きなのです!」
「これは珍しいのじゃ。雪降るかも知れんのう」
「ラビ、シノ。おはよう。城なしが気になってゆっくり何てしていられないよ」
だから挨拶もそこそこに皆で水源に向かった。
良かった。
いつも通りに戻っている。
川と池にも水が供給されてる。
「ああ、そうだ。二人とも寒かったり、息苦しかったりしないかい?」
「大丈夫なのです!」
「すっかり良くなったのう。不思議じゃな」
そう。
それは良かった。
だが……。
やっぱり、水が減ると城なしの環境維持能力が失われるようだ。
空の上は本来寒くて酸素も薄い。
だから、城なしの力が失われたらあっと言うまに氷の世界だ。
そして、恐らく、水がなくなれば城なしは堕ちる。
気をつけなきゃいけないな。
「ご主人さま難しい顔をしているのです」
「ああ、ごめん。ちょっと城なしについて考えていたんだ。大丈夫そうだし、昨日ついでに手に入れた魚を見てみよう」
「しかし、どこにも魚何ておらんのじゃが」
おや?
確かにいないな。
昨日水と一緒に水源に入れたハズなんだが。
「ご主人さま! こっちに新しく川が出来ているのです!」
「あっ、本当だ。海に繋がって……。繋がってはいないのか?」
「おお。こっちに新しい魚がおるのう」
なんだ?
何で新しく川を作ったんだろう。
しかも、海にギリギリくっつかないところで曲がってる。
あんまり無理して欲しくは無いのだけど。
「主さま。この魚ならわぁにも分かったのじゃ! これは鮭なのじゃ!」
「なるほど。鮭は海と川を行き来するから、池の方でなく新しい川を作ったのか」
「美味しそうなのです!」
これは思わぬ収穫だ。
何もないとこだと思ったのに鮭が捕れるとはなあ。
鍋の具が増える!
早速鍋にしようか。
朝っぱらから鍋ってどうなんだろう?
昨日はバナナで済ませてしまったし、構わないか。
しかし、疑問が残る。
何で城なしは鮭の事まで分かったんだろう?
まあいいか。
城なしはきっと空の上から地上を見続けているから賢いのだろう。
今回は城なしについて色々知ることが出来たし、城なしともずっと仲よくやっていきたいと思う。




