二百六十三話 空を飛ぶ城なしユンの答え
このお話は二百六十三話 拐われたユン届けられた脅迫状から大きく修正しました。
修正前の話はボツネタ集の方へ置いておきます。
お姫さまが語りだした。
いつもどおり狂ってた。
城なしはリッチマンだった。
レース会場は出来上がり、レースの運営も目処が立った。
馬や騎士もレースを開くに十分な移住希望者が集まった。
そして、城なしがへそくりを出してくれたので資金についてもなんの心配もない。
あとはユンがどうするかだ。
「ユン、話があるんだが今いいか?」
「うん? 騎士さまといっしょに行くかどうかって話?」
「ああ、答えが聞きたい」
ここではなんだからと言うことで、俺はユンと城なしに新しくできた層へと向かった。
新しい層は上の層が屋根がわりになって、地面がほとんど日影なのでひんやりしていた。
この層に唯一存在するのは競馬場。
そこでコースを縁取る石の柵に寄りかかり、俺はユンに語りかけた。
「ユン。どうだ? 城なしにいてもレースには出られるぞ?」
「ほんとうだね。ほんとうに騎士さまはレース会場を作っちゃったんだ」
「俺だけで作り上げたわけじゃあないけどな」
というかほぼ城なしが頑張った。
ん? ユンが静かだな。
もっと喜んでくれると思ったのだが、ユンの瞳はなんでか寂しそうに揺れている。
「試しに走ってみるか?」
「あっ、うん! 走ってみたい!」
「よーし、それじゃあユンが一番乗りだな」
よしよし、元気になった。
やはりそこは馬の性なのか、走る事には何よりも興味が勝るらしい。
俺はユンに跨がり、新雪に足跡つける気分で軽く走らせた。
「具合はどうだ?」
「ちょっと、土が湿っぽいし柔らかくてユルいかな」
「その辺は出来たばかりだから仕方がないさ。湿り気は時間で、土がユルいのは何度も走れば固まるさ」
土に水まきゃ当然水は重力に引かれて土に浸透していく。
だから、地下部分を切って引っ張ってできたこの層はまだ湿っぽい。
ユンの手足は泥んこだ。
「この先の宙に飛び出した部分がこのコースの売りなんだ」
「あのコーナーの部分?」
「ああ、その部分だ」
コーナーに差し掛かるとバータルの街が一望できた。
上から見たバータルもゲルゲルゲルとゲルばっかり目につく。
競馬場が無ければゲルしかったところだ。
「うわー! たかーい! すごーい!」
「城なしが浮上したら空の上だ。今とは比べられないほど高いところを走れるぞ」
「えー? 飛ぶの? 本当かなー?」
いや、そこは信じてくれよ。
城なしが空を飛ばないなら俺はずっとここにいる事になるだろうよ。
それから、ちょうど一周したところでユンが足を止めた。
しばらくの沈黙を経てユンが口を開く。
「あのね、騎士さま。まーは、騎士さまと走りたい。でも、騎士さまに付いて行くと今までの生活が変わっちゃうから怖い」
まあ、事実目に見える風景から食べ物に至るまで全部変わってしまうわな。
「そうか……。ならやめるか?」
「ううん。でも、騎士さまと走れなくなるのはもっと怖い」
「ユン……」
まだユンは悩んでいた。
しかし、今答えを出すつもりではありそうだったので、俺はユンを焦らさないようじっと答えを待った。
そして──。
「うわわっ! 騎士さま、この岩飛んでる! ほんとに空を飛ぶんだ!」
「おいおい、ユンはまだ信じていなかったのか?」
「だって、おっきな岩なんだよ!? 空なんか飛ぶわけないよ!」
初めての城なしフライトに興奮するユン。
そう、城なしは空を飛びユンがここにいる。
「んー、でもなんか雲が出てきて下が良く見えなくなってきた」
「ほらほら、城なしは雲の上に浮かんで飛ぶんだ。だから、もう見えないぞ。身を乗り出すと落ちてしまうから下がりな」
「えへへ、でも落ちたら一緒に落ちてくれるよね? だってまーと騎士さまはずっと一緒だもん!」
ユンは一番の笑顔でそう言った。
──これがユンの答えだ。
十四章城なしまとめ
城なし上層に変化なし
城なし下層に変化なし
城なし地下層 new!!
・競馬場 new!!




