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二十四話 お手伝いするのです

 シイタケ焼いた。

 シノに耳掻き作ってもらった。

 ラビのお耳をほじった。



 翌朝。


 ラビとシノをつれて空を飛び、地上の様子を確かめに来た。


「海なのです」

「海だな」


 まあ、そうだろうと思っていたさ。

 日出国とはお別れだ。

 俺は親指立ててクイックイッと前後に揺らし、大凧に張り付くシノに帰還を伝える。


 叫ぶとラビが近すぎて、長いお耳にダイレクトに声が伝わってかわいそうだ。

 この手信号ならラビにやさしい。

 手信号はカッコ良さげだしな!


「承知したのじゃあああああ!」


 ただし、シノは叫ぶ。

 俺は後ろ見えないからね。



 そんなわけで城なしにトンボ帰りだ。

 もちろん、アイスは作った。


「あいすは美味しいのです」

「毎日海でもいいのじゃ」

「毎日海だとアイスの材料も尽きてしまうよ」


 ラビとシノがバナナアイスを食べている間に、俺はやらなければならないことを片付ける事にする。


 米、大豆、サルナシを植えないと。

 海に出たら畑を耕すのが日常化してきたな。

 ほとんど耕してないけど。

 さつま芋は壺だし。


 あっ!

 米も壺でいいんじゃないだろうか。

 田んぼに刺して植える長さになったら水を入れる。

 壺で田んぼを再現するのだ。

 これなら田植えの手間も省けるし。


 壺はたくさんあるからな。

 皿とか鍋とか欲しいけど、城なしは何故か壺ひとすじだし。

 早速試してみるか。


「主さま。一粒一粒たねもみを植えていくとは、丹念過ぎる気がするのじゃ」


「シノか。バーって蒔いちゃうと間引くのが面倒になるじゃないか」


 種と言うのは全部が絶対に発芽する訳じゃあない。

 だから、普通は穴ひとつに複数の種を植えて後で不要なぶんは引っこ抜く。


 俺は不器用だ。

 余分なやつ抜く間引きが壊滅的に下手だ。

 間違えて全部引っこ抜いたり

 上のとこだけぶちってなったりな。


「おーい! ラビやちょっとこっち来て主さまを手伝うのじゃ」


「ちょ、シノ。良いんだよ、俺ひとりでやるから。子供は子供らしく遊んでおいで」


「主さま。わぁは、子供ではないし、こう言うのは子供の内から手伝うのが普通だし、主さまが突然病に伏せたりしたらどうするのじゃ」


 シノ言わんとすることは分かるが、子供の内から本格的に労働サイクルに組み込むのはなあ。


 既に、水やりや、自主的なお手伝いはしてもらっている。

 それで十二分な気がするんだけど。


「あと、こんなんひとりでやっていたら日がくれるのじゃ」


「うーんしかしだなあ」


「お手伝いに来たのです!」


 来ちゃったか。

 さてさてどうしたものか。

 ラビの奴隷=お姫さまってイメージも壊したくないんだけどなあ。


「ラビよ。お主はお手伝い嫌いかのう?」


「えっ? 好きですよ? ニョキニョキ毎日少しずつ伸びてくお芋見るのも、ご主人さまの色々な所を見られるのも楽しいのです」


「そう言って貰えるのは嬉しいが、ラビはやりたい事とかないかい?」


 俺の問いにラビは首をかしげ、難しそうな顔をして本気で悩み始めた。


 あっ、そもそも俺もこの問い苦手だったわ。

 やりたいこと何ていくらでも出てくる。

 でも人に聞かれると変に気取って出てこないのよな。


「やりいことやりたいことやりたいこと……」


「ら、ラビ。無理に考えなくても良い。俺が悪かった」


「主さまは子供の好きなようにさせたいのじゃろう? ならばラビに手伝わせてもよかろう。ラビはお手伝いを望んでおるのじゃ」


 それもそうか。

 しかし、シノは珍しく自分の考えを強く押したな。


「なあ、シノ。何かあったのか? やたら、ラビを自立させるように努めてるように感じるけど」


「あ、うむ。そうじゃな。出過ぎた事をした。申し訳ない」


「いや、全然構わないよ。ただどうしたのかなって」


 シノは目を細めややうつむき、なにか思案するようなを仕草を見せる。


 あれ。

 聞いたら不味かったかな。


「世は戦乱。幾多の戦場で男たちは散り、数多の家族が路頭に迷う。そんなのが当たり前の世界なのじゃ。だから……」


「ああ、分かった。もういい。それ以上はいい。すまなかった」


 子供でも生きて行くための力を付けなければならないと言いたいのだろうな。


 確かに、俺も不死身じゃあない。

 ラビやシノが危なければ体を張って助けるわな。

 そんで命おとしたり。

 そりゃ生活の糧は残さないとダメだよな。


 何だかまだ哀しそうな顔をするシノの頭をそっとナデてやった。


「わぁは子供じゃないのじゃ……。むふぅ」

「そうだね。シノは難しい事いっぱい言えるもんね。よしよし」

「いや、じゃから、わぁは──」


 今はおとなしくナデられておきんしゃい。


「じぃーっ……」

「ははっ。ラビもか」


 空気の読めないやつめ。

 だがナデる。


 しばらく存分にラビとシノをナデまわすと、たねもみを三人で壺に撒いた。



 次は大豆。

 大豆は青い内に収穫すれば枝豆だ。

 色変わるまで放っておいて乾燥すれば大豆になる。


 もう、ここまで来たら、大豆も壺で良いだろう。

 壺栽培万能説を説きたい。


「ご主人さま? 今度は一粒ずつ植えないのです?」


「大豆は間引かないから、一つの穴に三粒ずつ植えても問題ないよ」


「ほほう。主さまは物知りなのじゃ。じゃがちと知りすぎではないかのう? 何故ここまで知りえておるのじゃ?」


 おっと。

 知識の出所を疑われてしまったか。

 流石におかしいと思うわな。

 別に正直に言っても良いのだが……。


「俺は別の世界から生まれ変わった転生者だ」


「う、生まれ変わった? てんせいしゃなのです?」


「ん、んんー。ちとピンと来ないのじゃが、もう少し噛み砕いて話してもらえないかのう」


 まあ、こうなるわな。


「魂とか信じてない?」


「いや、生まれ変わったら、記憶は残らず魂の深層に刻み付けられ、それを繰り返すことで魂の質を高めていくものでは無いのかのう?」


 なんかややこしい話になってきたぞ?

 宗教の分だけ解釈が……。

 いや、下手すりゃ人の分だけ解釈があるのか。

 弱ったな。


「神様の気まぐれでこういった形でこの世界に生まれ落ちたから、説明何て出来ないよ」


「なら仕方がないのう。神とはわぁたちには考え及ばないモノ。何があっても納得なのじゃ」


「えええ!? 納得しちゃうの?」


「あれの行いにイチイチどおりを求めていたら時間がいくらあっても足りないからのう」


 まあ、妖怪と言う存在だから、人とはその辺の考え方は違うのかな。


 しかし、神様をよく知っている様な口ぶりだな。

 日出国には神様八百万いるのか?

 それと干渉出来てしまうととてつもなくめんどくさそうだ。

 ああ、だから悟ったような顔して納得したのか。

 面倒臭そうだし、会いたくないな。

 いや、日出国とはお別れしたし考えなくてもよい話か。


「コリッ」


「ああ、ラビ未来を食うてはならんのじゃ」


「ご、ごめんなさい……」


 これだよこれ。

 俺はこう言うちょっとした悪さを期待してたんだよ。

 こっそり、大豆をつまみ食いしちゃうなんて可愛いじゃないか。


「生だと消化に悪いからお腹ゆるくなるよ」


「ひええええ」


 いや、怒る気も脅す気も無いんだけどなあ。


 たくさん大豆が出来たら煎ってたらふく食べさせてあげたい。

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