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二百二十一話 ユンのおかーさーん! 探していたクソ騎士がここにいるぞー!?

 ユンがカユがった。

 掻いてあげた。

 気持ち良さそうだった。



 散々背中を掻いてあげたにもかかわらず、ユンは俺の腕に背中を擦り付けておねだり。


「ねえ、もっとまーの背中掻いてよう?」


「まだ足りないのか? まったく、しょうがない奴め」


「えー? だってー」


 あっ、なんか今どこぞのバカップルみたいな会話している気がする。


 でも、背中を掻いてくれなんて、ねだる彼女なんて聞いた事は無いわ。


 まあ、放っておいたら、ユンがはしたない女の子に見えてしまうので掻いてやる。


「おい……。貴様は余の前でいったい何をしているのだ……! 不愉快きわまりないぞ!」


 そこへ、もと騎士がヨロヨロと立ち上がり、ケチ付けて来る。


 おっと、すっかり存在を忘れていた。


「いや、カユいって言うから背中を掻いてあげているだけだが?」


「それが、気に食わんっと言っている、ユンは、ユンは余の馬ぞ!」


「違うよ? ユンは騎士さまの馬だもん」


 ユンは、草っぱらに座り込む俺の腕に自分の腕を絡めて、もと騎士の主張をぶったぎる。


 それを耳にし目にしたもと騎士は、耳に届きそうなぐらい強く歯ぎしりして俺を睨み付ける。


 これはヒドイ。


 ユンは分かってて、やってるんじゃあなかろうか。


 チラリとユンを見れば『もっと背中かいて?』と顔に書いてあるだけ。


 なるほど天然か。


「お前の気持ちは分からんでもないけど、それなら何で魔物から逃げたりしたんだよ」


「余はチュンカ帝国の重鎮ぞ? 余に何かあれば国の損失。我が身一番に行動するのは当たり前の事」


「なるほど、確かに」


 そりゃあ、偉い人が容易く一般人の為に命を落としていたら、偉い人が居なくなって国なんて回らなくなる。


 が、自分で言うことじゃあないだろう。


 それもユンの前で。


「なら、そもそも、こんなところで馬人とのんきに遊んでないで、国許に居るべきなんじゃないか?」


「うるさい、貴様ごときに余の行動をとやかく言われる筋合いはないわ!」


「あっ、そう……」


 人の話を聞きやしない。


 そう言えば、ユンのお父さんが、話の通じる相手じゃないって言っていたっけか。


「だが、今日のところはこれで余は引いてやる。決して余に勝ったなどとは思うなよ……?」


 なんもしてませんがな。


 しかし、なんもしないってのもな……。


 よし、ちょこっとひどい目に合わせてやろう。


「そっちこそ、これで逃げられると思うなよ?」


「面白い。余が見逃してやろうと言うのに楯突くか。そんな、震える足で何をしようと言うのか」


「いや、お前も大概だぞ? 腰が曲がってるじゃないか……」


 まあ、どうでもいいや。


 俺は大きく息を吸い込み、そして大声をあげた。


「ユンのおかーさーん! 探していたクソ騎士がここにいるぞー!?」


「なっ! 貴様、ユンの母上さまを呼ぶのは卑怯極まりないだろう! 余がどうなっても良いのか!?」


「知らん! どうにでもなれ」


 ユンのお母さんの事は、母上さまなんて言ったりするのな。


 まあ、ユンのお母さん怖いし、それも仕方の無いことか。


 ドドドドドド……!


 土煙をあげてとんでもない速さで駆けるユンのお父さん。


 その背中にサーフボードに乗るような格好で、槍を振り回し、叫ぶユンのお母さん。


「そこを動くんじゃないよクソ騎士! その胸にどデカい風穴開けてやるからね!」


 騎士ってのは、あんな乗り方も出来るもんなのか。


「しかし、何故あのようにユンの母上さまは怒り狂うておるのだ?」


「さあ、自分で聞いてみたらどうだ?」


「あの方は話の通じる相手ではなかろう」


 お前が、それを言うんかい。


「逃げた方が良いんじゃないか?」


「言われんでもそうするわ!」


 言うが早い、腰に手を当てよろめきつつも、もと騎士は馬に股がった。


「ふん! 面白い。アタイから逃げられると思っているのかい!」


 なんでか、もと騎士が馬に乗って逃亡を図ろうとした時の方がテンション上がるユンのお母さん。


 そうか、これはきっと狩りなのだ。


 逃げる獲物を追い詰めんと、狩人の血が騒ぐのだろう。


 俺も文字通り、怒りの矛先がこちらに向かないように、震える足を押さえてユンに股がる。


「しっかし、騎士ってのは武器も使えたりしないといけないもんなのか?」


 馬上で槍を振り回すなんてとてもじゃないが、出来そうにない。


「まーのお父さんは追い込み馬だから、まーのお母さんは槍なんだよ」


「オイコミ馬? 良くわからんがユンは武器を持たない競争馬なんだろう?」


「うん、まーの騎士さまなら武器はいらないよ? まーは競争馬で逃げ馬だもん」


 オイコミ馬とニゲ馬の違いは良くわからんが、武器を持って戦うレースもあるんだろうか。


 まあ、まさかユン以外の騎士は武器を持っているなんて事は無いだろう。


 俺は、逃げるもと騎士と、それを追いかけるユンのお母さんを眺めながら、そんな事を考えた。

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