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二百十四話 おいやめろ! そんなに羽を毟ったら、出荷前の鶏肉になってしまう!

 特訓が始まった。

 再びユンに股がった。

 落馬した。



 俺は今夢の中にいる──。


 まったいらな草原。


 周囲には無数の馬。


「まー」


「まーまー」


 馬はユンみたいに鳴きながら俺に群り近寄って来ては、俺の顔に鼻っ面をくっ付けようとしてきた。


「甘えたいのか? 仕方のないやつめ」


 撫でてやろうと手を伸ばすが、馬は俺の手を掻い潜り、背中の翼のニオイをふがふがと嗅ぎ始める。


「なんだ? 翼に興味があるのか?」


 はみはみ。


 馬は何ぞ俺の翼を優しくはみはじめた。


「本当に甘えん坊だな。あまがみは構わないけど、食べたりはしないでおくれよ?」


 なんてほんわか気分だったのだが、その気分は次の瞬間一転する。


 ブチっ。


 ブチブチっ。


「えっ……?」


 なんと馬たちは、羽をはむとブチブチとむしり始めたのだ。


 しかも、夢だという自覚はあるのに、本当に羽を毟られたような痛みと感覚がある。


 慌てて抵抗力するも、馬は意に介さず、俺は堪らず叫んだ。


「おいやめろ! そんなに羽を毟ったら、出荷前の鶏肉になってしまう!」


 しかし、そんな俺の悲痛な叫びはついぞ届かず、羽は一本残らず毟られる。


 地肌が露出して、これは全裸より恥ずかしい。


 なんて事をしてくれるんだこの馬共は……。


「まー」


「まーまー」


 しかも、馬たちは互いに俺から毟った羽を頭に挿し合い、まるで求愛でもしているみたいだ。


 まあ、夢だからどうでも良いわ。


 勝手にやっておくれと、その場に座り込み空を眺める。


「ご主人さま! 今助けるのです!」


 すると、空にはラビの顔が。


 月や太陽よりでかいなおい。


 いや、助けると言われても手遅れだし、馬をどうにかしてくるれるぐらいなら、俺を起こしてほしい。


 しかし、そんな思いはラビには通じず、ラビはどっからともなく取り出した壺をひっくり返して中身をぶちまけた。


 黄色い粉が空を埋めつくし、やがてそれは俺の鼻に届く。


 あっ、これウコンだ。


 フワッと香ウコンの霧。


 しかし、それは香だけで無く、ムズムズと鼻をくすぐるものだった。


「ふぁっ、ふぁっ……」


 ──。



「ぶわっきしょん!」


 クシャミをした直後、俺は夢から覚めた事を悟る。


「うわっ、鼻水かけられた!」


「鼻水きたない!」


 どうやら、気を失っていた俺の顔を覗き込んでいたらしく、鼻水をちびっ子の顔にぶちまけてしまった。


「すまん、なんだか、妙にリアルな夢で香辛料を撒かれたもんだからクシャミしてしまった」


 まだ、ウコンの臭いがするし。


「それはラビの魔法なのです!」


「すー!」


「ラビの魔法? ああ……」


 カレー言語魔法か。


 なるほど、落馬した俺をカレー言語魔法で癒してくれたと。


 だから、あんな夢をみたんだな。


 さすがに夢の様に、今の俺も粉まみれなんて事はなく、魔法の残り香がするぐらいだ。


 しかし、ラビなら壺いっぱいの香辛料をぶちまけたりしそうではある。


 それは危ない。


 まあ、香辛料の危険性については、おいおい伝えるするとして今は感謝だ。


「ラビ、ありがとうな。助かったよ」


「どういたしましてなのです」


「すー」


 とは言え、今もなんだか、寒気もするし本調子は出せそうにない。


 石を砕いた確かな感触は記憶に残っている。


 結構不味い状態だったのかもしれない。


 ここはテントの中の様だしそれなりに意識が戻るまでに時間が掛かっていそうだ。


 まあ、それはともかく気になる事がある。


 ちびっ子の頭に挿さるものに見覚えがあるのだ。


「なんだか、お前たちの髪飾りにたくさん付いている羽は、俺の羽に似ているな」


 と言うか、俺の羽なんじゃないかそれ?


 ふいっ……。


 あっ、目をそらした。


「まさかな……」


 呟いて、自分の翼を確認すると、右の翼のど真ん中に拳大のハゲが!


「よーし、そこのちびっ子二人。言い訳を聞こうか?」


 俺はにっこりと優しくちびっ子を問いつめた。

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