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二十一話 わぁは魚捕るのじゃ!

 石拾って遊んだ。

 城なしが本気だした。

 マイホームが石になった。


 しかし、屋根がないので、取り合えず新居の中に以前の住居を立て直した。


 ハウスインハウス。

 響きはよさげたが、現実はショボいのよな。

 次は屋根を優先で頼むぞ。


「床がゴツゴツしてないので気持ちが良いのです」


「葉っぱの床は体が痒くなるしのう」


「また、明日も石を拾ってこよう」


 日出国は、日本に酷似しているので、育てたことがある野菜も見つかるハズなのだが──。


 まずは石からだな。


「キラキラした石も……。探すのです……」


「ラビはもうおねむか。今日はもう寝ようか」


 俺とラビでシノを挟むようにして川の字に寝る。


 俺はこれをやってみたかった。

 家族で川の字になって寝る。

 ママンはいないが、娘の様な二人との川の字でも良いだろう。


「ご主人さまが遠いのです」


「寝るときはネコの姿の方が楽にゃのじゃ」


 ラビは俺にくっ付きたがって、シノは俺に乗っかり、結局いつも通り団子になってしまった。


 まあ、いいかな。

 これはこれで悪くないし。

 好かれている証だろう。


 ラビとシノが寝るまでそっと頭をナデてやった。



 翌日。



「チュン、チュン。チチチ……」


 すっかり、上手に鳴けるようになったすずめの声で目覚めた。


 朝か。

 まだ薄暗いけど、今日は早く出たいな。

 石を早めに集めて、探索を──。


 ぐぅ。


「ご主人さま、朝なのです!」


 おっといかん寝てしまった。

 何だかまただらだらとした朝になってしまう気がしてならない。

 しかたない、裏技を使おうか。


 俺は息を止めた。

 こうすることで体を緊張させ、一気に頭を覚醒させるのだ。


「ぷっはー! はあ、はあ、はあ……」

「な、何をしてるのです!? あっ、でも今日は目ざめが良いのです」

「やらなきゃならない事があるから気合いを入れたんだ」


 今日もシノは腹の上か。

 寝返りとか結構危ないと思うんだけど、忍者だから大丈夫なのか?

 まあ、このままじゃ危ないからどけさせてもらおう。


 俺は腹の上に寝ているシノを持上げ、壺にしまい、猫鍋ならぬ猫壺にすると支度を始めた。



 そして、朝食を終えたら直ぐに地上へ向かう。


「あー。海が見えるのです……」


「なんじゃ、がっかりそうな声を出して? ラビは海が嫌いかのう? 海は良いものじゃぞ?」


「シノ。城なしは移動しているだろう? 明日にはもう日出国から出てしまう。そうなるとしばらくは、海上が続くから地上に降りれなくなるんだ」


「あっ。ぬかっておった。そりゃ、そうじゃな。ずっと海だと暇になるのう」


 まあ、やることはあるのでどーにもならんぐらい暇になると言うことは無いけど。

 今日は、あの滝辺りに降りようか。

 あんまりでっかくないから、滝っぽく見えないな。


「水が澄んでいるのです」


「魚がおるのじゃ。わぁは魚を捕るのじゃ」


「そうかそうか。たくさん捕ってくるとありがたいな」


「任されたのじゃ」


 バナナばかりだったし、魚を持って返るのも良いだろう。


 ラビは猫だから魚を捕るのが上手そうだ。

 任せてしまおう。


「俺は石を集めるから、ラビも自由に過ごすと良いよ」


「ラビはご主人さまのお手伝いをするのです」


「ひとりで大丈夫だから、好きなことに時間を使うと良い。お手伝いばかりじゃ疲れてしまうよ?」


「うーん。それなら綺麗な石を探したいのです」


 ラビは綺麗な石探しか。

 昨日の石広いで趣味に目覚めたのかな。

 それぞれ自由に楽しむといいさ。



 バシャバシャと川に入って魚と格闘するシノ。

 しゃがみこんで、石とにらめっこするラビ。

 そんな二人を横目に俺は石を端からウエストポーチに突っ込むと城なしに持ち帰った。



 三度目の往復を終えたところで食事をせがまれた。


「主さま。魚がたくさん捕れたので、そろそろ、お昼にするのじゃ」


「そうだな。もう、そんな時間か」


「おシノちゃん、本当に魚を捕るのが上手なんですよ」 


 どれどれ。

 ほほう、これはこれは。

 たくさん壺に魚が入っているが、何て名前なのかまでは分からんなあ。


「シノ、この魚はなんと言う名前なんだ?」


「ヤマメなのじゃ。焼いて食うと旨いんじゃぞ」


 これがヤマメか。

 アユ、イワナ、ニジマスと一緒に名前だけは知っているが、見分けがつかないシリーズだ。


「じゃあ、焼いて食べようか、ラビとシノは焚き火の準備を頼むぞ」


 俺は元ニートだ魚ぐらい捌ける。

 とはいえ、生きた魚を捌くのは初めてなんだよなあ。

 えーと、先ずはエラにナイフを入れて……。


 びちびちびち。


 ええい。

 イキが良くてやりずらいな。


「せいっ!」


 びくんっ。



 後はわただして処理を終えたところで塩をふり、焚き火のまわりに並べてみんなで囲む。

 俺はこれをやってみたかった。

 川魚を調理するならこうだろう。


「良いニオイがしてきたのです」

「やはり、魚は良いのう」

「ああ、きっと旨いぞ」


 くるくると回しながら、しっかりと火を通す。


 もうそろそろ良いかな。


「もう食べて大丈夫だよ。でも、火傷には気を付けてね」


 手にとって渡すなんてしない。

 焚き火に刺したのを直接取るのが良いのだ。


「あふいのれす。でも、美味しいのです」


「ラビよ。ふーふーして、食べるのじゃ」


「うん、旨い」


 脂は乗っていないが、身は引き締まっていて臭みがなく、旨味がある。

 これは、絶品。

 是非とも城なしで養殖したい。

 

 そんなわけで、食事を終えると城なしに戻り、池を作ることに決めた。

 が、ラビから待ったが入った。


「あの、ご主人さま、これをあげるのです」


「おおっ。これは綺麗な紫水晶じゃないか。天辺の紫から根本へ向かって白に変わるグラデーションがいいな」


「ラビよ。良いのか? その石はお主のお気に入りじゃろう?」


 おや?

 良いのか貰っちゃって?


「良いのです! ご主人さまの為に探していたし、おシノちゃんの様にお魚捕ったりできなし……」


「そうかラビ。ありがとう大切にするよ」


 これは受け取って良いやつだ。

 なんかしなきゃって、気にしてしまったか。

 なーんもせんでも愛でてあげるんだがなあ。

 そもそも、奴隷=お姫さまのはずなのだが……。

 シノが加わった事で、心で揺れるナニかがあるのかな?


「さて、城なしにまた戻るとするかな」



 楽しい食事とラビのサプライズを受け取った俺はひとり城なしに戻った。


 魚を水源に直接放り込むと、水が汚れそうなんだよな。

 綺麗な川に住んでいるとはいえ気になるかな。

 かといって、今ある川だと魚がトイレへ一直線に突撃してしまう。

 やはり池だな。

 魔法で穴を開けるが許せ城なし。

 

「【放て】」


 城なしに穴を開けると、川底から拾ってきた石や藻を敷いた。


 本当は川が良いのだけど。

 城なしに川魚と海の魚の違いは分からんよなあ。

 海に繋がれても困るし、川をトイレに繋げられても困る。

 取りあえず、これで様子を見よう。

 魚は増えてくれるだろうか。


 上手く魚が増えるようにお祈りして、俺は再び地上を目指した。

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