二百話 ジュリに何でもしてもらえる権利
理不尽な問題だった。
貝から女の子が出てきた。
ジュリにも答えが解らなかった。
レニオが能力を使って二つの巻き貝の種族を確かめるも、結局俺は不正解だった。
やれやれ、ふざけたクイズがあったもんだ。
まあ、二人についてそれなりに分かったから良しとしよう。
しかし、これ以上はクイズになんぞ付き合ってられん。
「じゃ、俺、釣りに行くから」
「ま、待って! 1問目かすってたから、賞品はあげる! だから行かないで!」
「いや、かすってって……。どんだけ俺に何かさせられたいの? ならなんで問題を難しくしちゃったの?」
「だって直ぐに終わちゃったら、イッちゃんは釣りに行っちゃうじゃない」
おいおい、ジュリは何を考えているんだ。
ふつうこの食料危機にクイズで足止めせんだろう。
だがそんなふざけた事をしていられるのもここまでだ。
「じゃあ、ジュリに何でもしてもらえる権利を使う」
と、俺が宣言すれば。
「うん。何でもどんとこいだよイッちゃん!」
ジュリは、期待に満ちた目をして、自分の胸を叩く。
ああ、ジュリの顔が、次の言葉で絶望に歪むと思うと罪悪感が……。
でもやめない。
俺は姿勢を正すとジュリに命ずる。
「ジュリはこれから一週間レニオの言うことを聞いてオーナーらしくするんだ」
「ふへ?」
ジュリは言葉の意味を直ぐには理解できなかったのか、数秒固まる。
そしてその後、決壊したダムから溢れる水のように、ジュリの口から叫び声が飛び出した。
「ぬえええええええ!? 男の子の夢がいっぱい詰まった権利なのよ? なんでそんな事に権利を使っちゃうのイッちゃん!」
「なんでもなにも、これが一番皆のしあわせの為になるだろう」
「そんなのイヤだよ。私は不幸せだよイッちゃん!」
知らんがな。
「ジュリは何でもするって言ったじゃないか」
「言ったけど、思ってたのと違うよイッちゃん!」
「そうかそうか。残念だったなジュリ。ま、そんなわけだから、後を頼んだぞレニオ」
悲痛な叫びをあげるジュリとは対照的に、これまで見たことがない、良い笑顔のレニオにジュリを託す。
「任せてよ。一週間も言うことを聞かせられるなら、十分オーナーを更正させられるよ」
「それは良かった。じゃ、俺は釣りに行ってくる。釣果を楽しみにしていてくれ」
「そんな! イッちゃんの鬼畜! 人でなし! スカポンタン!」
おうおう、酷い言われようだな。
しかし、何とでも言うが良い。
全てはみんなの為なのだ。
「じゃあ、みんな城なちに乗っておくれ。出発するぞ」
「いっぱいお魚捕まえるのです!」
「すー!」
ずりずりとレニオに引きずられて、連れていかれるジュリを尻目に俺たちは城なしを後にした。




