百九十八話 突然ジュリエッタクイズ
ラビのお耳がビリビリした。
ジュリが訳の分からないことを言い出した。
聞き流した。
釣りをするには道具がなければ始まらない。
なので、俺は一度上層に戻ると釣り道具の手配をシノにお願いすることにした。
「シノ。見世物小屋の人たちと釣りをするから、道具を作って欲しい」
「ほう。釣りとな? わぁも混ざってよいのかの?」
「もちろん。と言うか釣り名人のシノには来てもらわないと困る」
名人と言ったとこで、ひょこんとシノの耳が飛び出した。
更には気を良くしたのか、口元を緩ませニヤニヤと笑みを浮かべる。
「そこまで言われては仕方がないのう。わぁに全部任せるのじゃ! して、いつまでに支度をすれば良いのじゃ?」
「そうか。助かるよ。一時間後に待ち合わせをしているから、それまでに釣り道具の作成を頼む」
「ふむ。一時間後か……。一時間後じゃと!?」
ん? 何を驚いているんだ?
「最初だから棒に糸と針を付けた簡単な作りのもので構わないぞ? 一時間もあればシノなら十分だろう」
「そんな半端な物を作るのは、わぁの職人としての矜持が許さないのじゃ」
「いや、シノは忍者だろう」
まあでも、確かにどうせならちゃんとした道具の方が良いか。
「なら簡単なモリでも、網でも構わない。食料の調達が課題だ。魚を捕ることに重点を置こう」
「いや、モリはともかく、網なんて……。ええええい! やってやるのじゃ!」
おお、良くわからんがヤル気になったみたいだ。
シノがやると言えば道具は出来るだろう。
そんなわけで一時間後。
「な、何とか間に合ったのじゃ」
俺の前にはピッカピカの数本の竿とモリ、網が1枚。
「なんだ。一時間もあれば作れるんじゃないか」
「作れたのではない。作ったのじゃ!」
「そうか。でも、網なんて尻尾を出して、尻尾で編む余裕っぷりだったじゃないか」
それぞれの尻尾が独立した生き物みたいでちょっと面白かった。
「そりゃ、猫の手も足りなければ、尾を使わざるを得ないのじゃ」
「まあ、なんだって良いや。皆待ってる。俺たちも急ごう」
「休憩ぐらいさせて欲しいものなのじゃ」
しょうがないなあ。
「なら、労って担いでやろう。よっと……。ほら、これなら休憩したまま行ける」
「そんな、荷物を抱えるみたいに……。わぁも一応女の子なんじゃが……」
「分かってる分かってる」
ぶつくさ言うシノを抱えて、待ち合わせの場所へ向かう。
待ち合わせの場所は下層のはしっこ。
そこには既に城なちがいて、その前のところにジュリたちがいた。
「ご主人さま! こっちなのです!」
「すー!」
ラビと狂竜も一緒だ。
「イッちゃん! ご注文の通り釣りの為の強力なメンバーを選出してきたわ!」
「ぎょ(どうも)」
「いや、メンバーって、深海人魚の子だけかい」
レニオも側にいるが、釣りには着いてこないだろう。
あとはなんぞ知らんが、その深海人魚の子の後ろに大きな巻き貝が転がっているぐらいだ。
「イッちゃん、そんな呼び方じゃなくてちゃんと名前で呼んであげて欲しいわ」
「いや、まだ名前を知らないんだが……」
「んもう。だいぶ長いこと一緒にいるのにまだ名前を覚えて無いの?」
そんな長い間一緒におらんわ。
まだ出会って四日目だ。
「この子はギョっちゃんよ。ちゃんと覚えてあげてね!」
「ぎょ(よろしく)」
「えっ、ギョっが名前なのか?」
酷いネーミングセンスだ。
しかし、まあ忘れそうにない名前ではある。
若干の困惑を覚えていると、レニオが側にやって来て俺に耳打ちする。
「気を付けて。オーナーが、さりげなく色仕掛けをするってぶつぶつ言ってるのを、さっき耳にしたよ」
「えっ? まだやる気なの? はた迷惑な。でも、気をつけろったってどうすりゃ良いんだ」
「それはボクにも分からないけど……」
まあ、さりげなくって言うぐらいだから、こんな人目のあるところでは、仕掛けて来ないだろう。
「うふふっ。さて、ここでイッちゃんにジュリエッタクイズを出しちゃいまーすっ!」
「なんだ突然。これから、食料調達しにいくんだぞ? そんなことはしていられない。後で遊んであげるから大人しく待っていておくれ」
「あーん。イッちゃんがつれなーい!」
知らんがな。
「ちゃんと豪華賞品も用意したのよ? なんと! 賞品は! わ、た、し! うふふふふ!」
なんだそりゃ。
いや待て、これが件の色仕掛けなのか?
微塵もさりげなくない!
「ああ、うん。そうか、それは良かった。でも、人とか景品にするもんじゃあ無いだろ」
「だって、全部燃えちゃったんだもん……」
それは……。
「しかしなあ……」
「じゃあ、イッちゃんが一問でも正解したら私が何でもしたげる! って言うのはどうかしら?」
「ほほう何でもか。それならやっても良いかも知れない」
「うふふっ。イッちゃんに私何させられちゃうんだろう?」
なんでそんなに嬉しそうなんだ。
「それじゃあ」
と、ジュリはそこで一度前置きの言葉を切る。
更には、海老みたいに腰をクイッと引き、俺の鼻先数センチのところに人差し指を立て見せた。
決めポーズ?
クイズの演出のために考えたんだだろうか。
十代でも無いのに相当な無理をしよる。
「第1問。この子たちの種族はなんでしょー?」
そして、ジュリは、二つの大きな巻き貝を指して問うてきた。




