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百九十七話 お姉ちゃんの作戦

 壺風呂の土台が割れた。

 壺風呂が落ちてきた。

 壺風呂で溺れた。



 翌日。


 俺は地上の様子を見るために、狂竜を抱えるラビを抱えて空を飛んだ。


「海か……。なら今日は釣りだな」


「お魚捕まえるのです?」


「すー?」


「ああ、見世物小屋の人たちを引き連れてたくさん魚を釣るんだ」


 畑を作っても直ぐに食べられるものが出来るわけでは無いので、手っ取り早く狩猟や漁猟行う必要がある。


 地上が陸だったら狩猟を行うつもりだったが、海なので釣りだ。


 陸の方が楽しみは多いが危険も多い。


 魔物に襲われたり、迷子になる人も出るかもしれない。


 海だと城なちに乗って釣りをするだけなので安全だ。


 最初が釣りで良かったのかも知れない。


 しっかし──。


「ぶぇっくしぃーん!」


「ぴっ!」


 ──ぬう。


 やはり空の上は寒いな。


 しかし、いつもよりずっと寒く感じる。


 昨日は湯上がりで体もロクに拭かずに動き回り、ついでにそのまま眠りについたものだから調子がイマイチだ。


 風邪でもひいたかな。

 あっ、ラビがうるうるしたお目めで俺を見てる。

 心配させてしまったんだろうか。


「お耳が、お耳がビリビリするのです……!」


「すー……!」


「ああ、すまん。鼻を抑えたらラビを落っことしてしまうから、鼻を押さえられなかったんだ」


 俺のからだを心配しているわけじゃあなかったか。

 そら俺の鼻のすぐ近くにラビのお耳があるんだ。

 くしゃみなんてしたらうるさいわな。


「むうっ。ご主人さま今日はゆっくり寝ていた方が良いのです!」


 あっ、やっぱり心配させていたか。


「そうしたいのは山々だが、そうも言ってられない。食料が以前の10倍の早さで無くなっているからな」


 うかうかしていたら、直ぐに食料が空っぽになってしまう。


 やれやれ50人分の食料か。


 途方もないわなあ……。




 そんなわけで城なしに戻ると、今日の予定について打ち合わせをする為にジュリの家を訪ねた。


 入り口には扉がわりに布が掛けられている。


 これはジュリの家だけではなく、どの家でも同じだ。


 配った布は服や布団がわりに優先して使うと思っていたが、そうでもなかった。


 女ばかりでも中が見えっぱなしだと落ち着かないそうな。


「お姉ちゃんは何を考えてるの!?」


「うふふ。もちろん、皆のしあわせを考えての事よ? そして、イッちゃんと私のしあわせの為でもあるわ」


「少なくとも、ボクはしあわせな気分にはなれないよ……」


 あっ、なんかまた揉めてる。


「毎日飽きずに良くやるな。今日はいったい何が原因でケンカしているんだ?」


「あらイッちゃんおはよう! うふふ。それはイッちゃんには秘密よ」


「オーナーは今日、君に色仕掛けをするそうだよ」


 なんだそりゃ……。


「あらあら、ダメじゃないレニオ。お姉ちゃんの作戦をバラしちゃったら!」


「ボクがそんなバカな作戦に協力するわけないじゃないか」


「あー、はいはい。まあ、落ち着いてくれよ。何で、また突然色仕掛けなんてしようと思ったんだ?」


 まったく話が見えない。


「昨日のアレで、興奮した君がウチの娘に手を出すんじゃないかって考えたらしいよ」


「そう! でも、私とイッちゃんがくっつけば、そんな心配もなくなるでしょう? ほらっ。これならレニオの大好きな責任も果たせるわ」


「そう言うのはボクの知らないところで勝手にやってよね。朝から実の姉に色仕掛けをすると聞かされたボクの気分は憂鬱だよ」


 確かに身内のそんな話は知りたかないわな。


 でも、どちらかと言うと、その責任とやらは俺に降りかかるものなんじゃあなかろうか。


 と言うか、お手て繋いで無言でカゴメカゴメされたら、そのまま一生引きこもりかねない俺に何の心配を抱いてるんだ。


 いや……。


 俺はこんな話をしにここへ来たんじゃないわ。


「まあ、そんなのはどうでもいい。今日は釣りに行くから、釣りの得意そうなメンバーを選出しておくれ」


「どうでもいい!? イッちゃんは愛よりも釣りが大事なの?」


「そら釣りのが大事だろう。ゴハン食べなきゃ、愛とか育む前に死ぬわ!」


 しかも、50人以上道連れにして死ぬわ。


 しかしジュリには理屈は通じない。


 その後、何故か愛の大切さについての話をしばらく聞かされる事になった。


 が、軽く聞き流し。


「ああ、そうだ。急ぎじゃあ無いんだが、日中余力があれば、畑を耕しておいて欲しい」


 と言い残して俺はジュリの家を後にした。


「もうっ。イッちゃん! 私諦めないからね!」

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