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百九十五話 女湯のキケンな構造的欠陥

 レニオと洗いっこした。

 なんか生えてた。

 怒られた。



 そんなこともあったりしたが、まだまだ楽しいお風呂タイムは続く。


 だが、楽しいばかりのお風呂タイムとはいかず、とんでもないハプニングが起きようとしている。


 その全てのは原因は女湯の構造的な欠陥にあった。


 女湯の巨大な壺。


 それは当然、高さも相当なものとなり、本来なら風呂に入る為に階段やハシゴを必要とする。


 だが、風呂に入った後ってのは、頭がフラフラするもので、階段やハシゴは事故の原因になる。


 出来れば、そんな事故は避けたかった。


「ムガー!」


 なのでクララに頼んで、見世物小屋の人たちを上にあげてもらう事で安全を確保していた。


 しかし、その安全策が仇となる。





 からだを洗いっこして、キレイになった俺とレニオ。


 そして、狂竜の二人と一匹は壺風呂を堪能していた。


 中でも狂竜なんかは──。


「すー!」


 バシャバシャバシャ。


 ぶかーっ……。


「すー!」


 バシャバシャバシャ。


 ぶかーっ……。


 足をバタバタさせて、お風呂に潜っては浮かび上がる謎の遊びを始めるほどの堪能っぷりだ。


 そんな狂竜を生暖かい目で見ていると、レニオが話しかけてきた。


「たまにはこう言うのもいいね」


「そうだろうそうだろう。薪がもったいないから、本当にたまにしかできないけどな」


「あはは、毎日は贅沢だよね」


 どうやら、レニオも風呂が気に入ったようだ。


 無理もない。


 お湯が魔女ドリンクと言うのもあってか、体の芯まで染み渡る様な気持ちよさだ。


「ふー。良い湯だわー」


 そんなもんだから、ため息を一つ。


 俺は壺の縁に手を掛けて、なんの気なしに空を仰ぎ見た。


「ムガー!」


 しかし、そこでちょっとしたハプニング。


 なんとクララの手に乗り、背を夕日に照らされて逆光にさらされる女の子の裸が見えてしまったのだ。


「ぶほっ!」


「うわっ! なんで突然吹き出すのさ。汚いよ」


「いや、すまん。なんでもない。なんでもないんだ。だから、決して上を見るなよ?」


「えっ? 上? あっ……!」


 あーあ、見ちゃったよ。

 見るなって言ったのに……。

 顔を真っ赤にしちゃってまあ。


 しかし、これは誤算だったな。 


 布で男湯と女湯を仕切ったから、大丈夫だと思っていたんだが、上がガラ空きだもんな。


 そら高低差があれば見えてしまうわ。



 と言うか、女湯からこっちも見える。



 これは不味い。

 出るに出れないじゃないか。

 いや、前を隠して出れば良いか?


 いやいや、隠して出たら女湯を覗いたことを悟られてしまう。


 なら隠さずに出る?



 そんな勇気はない!



 チリッ……。


 ああ、なんかつむじの辺りに視線を感じる。


 どうやら、あちらはこちらを見ているようだ。


 しかもどんどん視線が増えているような……。

 いや、遠慮なく覗きすぎだろ!


 その時だ。


「ご主人さまー! ここからだとご主人さまがよく見えるのです!」


 ラビが上から俺を呼んだ。


 だが、俺はそれに応える事は出来ない。


「ムガー!」


 いまだクララが、女の子を乗せて腕を上げ下げしているから、振り返ったら見えてしまう。


 だから、ここで取るべき選択は……。


 しらばっくれる!


「んー? ラビ? どこにいるんだー?」


 そう、こうする事によって、何も見てません、見えちゃう事なんて知りませんアピールが出来る。


「滑稽だね」


「仕方ないだろレニオ。全ては事故だ。こうするのが、みんなの幸せの為なんだ」


「どうだろう。ボクはそれじゃあ上手くいかないと思うよ」


 やれやれ。


 レニオには、俺の高度な作戦は理解できないか。


 なんて、俺の慢心は次のラビの言葉によって打ち砕かれる。


「ご主人さま! ここなのです! ラビは上にいるのです!」


 ぐっ……。

 そう言うことか。

 しらばっくれても、ラビは俺を呼ぶのを止めないとレニオは言いたがったのか。


 困った。


 仰ぎ見れば色々見えてしまうし、仰ぎ見なければ、見えているのを知っているのではと、見世物小屋の人たちに疑われてしまう。


 時間はない、直ぐにでも答えを出さなければならない。


 だが、どちらを選んでも俺は……。


 しかし、どちらを選ぶまでもなく、事態はより深刻なものへと変わる事になる。


 ピキッ……!


「ん? 今女湯から変な音がしたような?」


「ねえ……。今のって、もしかして壺の割れる音なんじゃないかな?」


「いやいや、壺の中には水が入っているから火に掛けても割れることは……」


 あっ、そういえば台にした壺に水を入れなかった。


 俺がその事に気が付くと同時に。


 バサッ……!


 仕切りの布をまくり上げて、ジュリがこちらへ飛び込んできた。


「イッちゃん大変壺が……!」

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