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百八十八話 伝えるんだマルチン

 不安に思う俺の心中を察したのかシノが俺に耳打ちする。


「主さま。心配せずともルーシアやポールランドに赴いて何かしてもらうわけではない。主さまは何もする必要がないのじゃ」


「本当か? 頷く必要すらないのか?」


「うむ……。うむ? 頷く? 良く分からぬが……。まあ、出来れば今は姫君たちを不安にさせぬようドッシリ構えていて欲しいのじゃ」


 そのぐらいなら何もしないのと変わらない。


 お安いご用だ。


 それに今度は頷かないから、さっきの様にウッカリとんでもないお願いにYESと答える心配もない。


 俺はシノの注文どおり、足を肩幅よりやや開き腕を胸の前で組んで口と眉根に力を入れてドッシリ感を演出してみせた。


「それでおシノさま。神さまの出番ってのは如何なものなんです?」


「うむ。主さまには極悪非道を貫く邪神になっていただく」


 うぉーい。


 なんもせんで良いって言っておいて、いきなり極悪非道を貫けとかなに言ってるんだシノは。


 思わずツッコミを入れたくなったが、今の俺はドッシリだ。


 口を開く分けにはいかない。


 代わりにお姫さまが悲鳴に近い口調で抗議してくれた。


「そんな! 神さまは清く正しく美しく、信じるものは全て救い出さんと言う崇高なお方。ポールランドごときを救うためにその様な行いを神さまが為さるのを恐れ多くて看過出来ません!」


 うん。何だろう。


 このラビと親和性の高そうなお姫さまの神さま像は。


 抗議してくれたのはありがたいんだが、ちとそうありなんと言うのはハードルが高い。


「案ずるでない。実際に悪事を働く分けではないのじゃ。あくまで印象操作。ヒゲリアとポールランド、そしてルーシアに主さまが悪意を持って皇子と姫君を拐ったと思わせることができれば良い」


「ふむ。ヒゲリアとポールランドの関与を疑わせない為に神さまが泥を被ると仰るのですな」


 なるほど。

 確かに第三者に拐われたとなれば話は変わるか。


「いけません! 例えイメージであれ神さまにその様な不名誉を被せるなど!」


「姫君。そなたの言葉はもっともなのじゃ。じゃが、それは主さまの顔を見て、尚同じことを言えるのかのう?」


「神さまのお顔……?」


 おっと、突如俺に視線が集まった。

 だが、動じる分けにはいかない。

 俺はドッシリなのだ。


「こ、これは! 眉ひとつ動かさず、それでいてあらゆる意思を受け付けない不退不動の構え。揺るがぬご覚悟の上でのお話なのですね……」


「左様。最早意は決している。何人たりともそれを覆すことなど許されぬ」


「ははっ、申し訳ありません」


 ドッシリでお姫さまもひれ伏してしまった。


 全てがシノの計算の上にあると思うとおっかないわあ。


「姫君。ニラコイ皇子を“これは奇っ怪な生き物、どれ芸の一つでも覚えさせて人を笑わせてみせようか”と主さまがそんな理由で拐ったとしたらルーシアはどう思うかのう?」


「激怒なさるかと」


「マルチン。ついでに居合わせた姫ぎみにそんな家畜の世話と芸の仕込みをさせているとしったらポールランドはどうでるかのう?」


「戦争ですな」


 てなわけで、俺がお姫さまと皇子を拐った理由はでっち上げられた。


「家畜の世話……。芸の仕込み……」


 などと、お姫さまがぶつぶつ言っているのは気になるが後はこの事実を三国に伝えれば決着がつく。


「マルチン。そなたには地上に戻りこれを伝える命を下す」


「はっ。必ずや三国へこの事をお伝えします」


「うむ。恃んだぞ」


 もう、ドッシリせんでも良いだろう。


 俺がマルチンを地上に連れていく必要があるし。


「マルチン。地上まで俺が送るよ」


「それには及びませぬ。無傷では疑われます故。ではその様に手配して参りますぞ!」


 言ってマルチンは城なしの縁で宙返りすると、頭から地上に落ちていった。


「えっ……」


 余りにも突然の出来事に一瞬思考が止まる。


 直ぐに気を取り直し後を追おうとするもお姫さまに腕を掴まれる。


 振り払おうにもお姫さまの力が強すぎてそれは叶わない。


「お姫さま? 放してくれ。放っておいたらマルチンが……」


「大丈夫です。マルチンは特殊な訓練を受けているので両手両足が砕ける程度で済みます」


「そんなバカな……」


 とても信じられる話ではないが、お姫さまの表情は至って真剣だ。


「ポールランドの首都はその国名の通り、地面から突きだした何本もの石柱の上にあります。勿論、城も例外ではありません」


「ほー。そりゃ、面白いな。魔物の被害に遭いにくくて住みやすそうだ」


「はい、それが功をそうして過去には栄華を極めました」


 魔物の被害に遭わないってのはそれほどにアドバンテージのあるものなのか。


「しかしながら、転落事故が絶えず長い間問題になっていました。そこで、落下しても大丈夫なように国家主導の落下訓練を行うようになったのです」


「いや、訓練して何とかなるものなのか?」


「はい。初めは小さな高さから飛び降りて、最後は底の見えない高さまで徐々に変えていくんです」


 いや、無理だろう。


 と、思ったのだが怪我をしても魔法で癒せる為に普通なら死んでいる高さでの経験を何度でも積めるために可能になったんだそうな。


 俺の【落下耐性】が霞む!


「しかし、国民全てにそれをやらせるのは酷じゃないか? とてつもなく痛いだろうし恐いだろう」


「もちろん強制はしませんが、落下訓練を拒むと見下されたりするのであまり拒否なさるかたはいません」


 強制はなくてもそういうのはあるのか。

 ポールランドに生まれなくて良かったぜ。

 って、俺は【落下耐性】あるんだったわ。


「下手すりゃ命に係わりそうなんだがお姫さまもアレ出来たりするのか? 」


「はい。習得するまでに何度か命を落としかけましたが、その甲斐あって城を抜け出す際に困りませんでした」


「そうかい」


 ともかくマルチンの心配はしなくて良いようだ。


 後は、二国、あるいは三国に俺が追われる事になるだろうがここは空の上。


 そして、明日にはどこか別の国だ。


 これで本当にこの騒動に決着がついた。


 しかし、やることはたくさんある。


 だが先ずは腹ごしらえでもするとしようか。

十二章城なしまとめ

 施設

 ・かまど

 ・トイレ

 ・トイレ:お客さん用

 ・忍者ハウス

 ・壺ぶろ

 ・コンポスト

 ・城消滅 new!!

 ・ぷちラビの浮き島


 家畜、魚

 ・すずめ

 ・ニワトリ

 ・ヤマメ

 ・サケ

 ・イワシ

 ・サンマ

 ・マグロ


 畑など

 ・さつま芋の壺畑

 ・大豆の壺畑

 ・米の壺田んぼ

 ・シイタケ

 ・オクラの壺畑

 ・ポップコーンの壺畑

 ・ウコンの壺畑


 果樹など

 ・バナナ

 ・サルナシ

 ・ヤマグリ

 ・竹

 ・クルミ

 ・お茶

 ・パイナップル

 ・オレンジ

 ・白桃

 ・ドラゴンフルーツ

 ・竜眼


 その他

 ・城なしの子供『城なち』

 ・水源

 ・川:トイレ直行

 ・川:池通過

 ・川:サケ用

 ・海

 ・池


 城なし下層 new!!

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