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百八十二話 倍増するポールランド勢

 城なしの血は赤かった。

 しかしそれは魔女ドリンクだった。

 震えが止まった。



 やること考えてやること決まれば後はやるだけだ。


 しかし、俺一人の独断で事を始めるのはよろしくない。


 そもそも、ジュリたちに協力してもらわない事には始まらない。


 だからまずジュリたちと一度話をする必要がある。


 俺は一度ジュリたちの元に戻った。


 ジュリだけでなくレニオにも一緒に話を方が良いかな。

 なんかジュリだけじゃ不安だし。

 それにお姫さまにも話をしないと。


 そう考えた俺は三人を集め、 みんなを城なしに乗せて現状の打開を図ろうと考えている事を伝えた。


 で、それぞれの反応は。


「まあ素敵ね。お空の上で生活できるなんて何だかおとぎ話みたい。イッちゃん、是非私をお空の上へ連れて行って!」


 なんてメルヘンチックな事を言ったのが52人もの大所帯を率いる見世物小屋のオーナー、ジュリである。


 オーナーとしてもうちょっと他に考えなきゃならんことがあるんじゃないかとも思ったが、組織のトップと言うのはこれぐらいでないと務まらないのかも知れない。


 では、それなら一国のお姫さまだとどういった反応を見せるのか。


「神さまの仰せのままに……」


 と、膝を折り、祈るように穏やかな表情で短く答えて見せる。


 これは酷い。


 なんだか振る舞いはお姫さまらしく格式張ったもので、大変美しい姿勢ではあるがすべては神頼み。


 ポールランドの未来に対する責任までもが俺に託された。


 お腹いたい。


 お姫さまとは後で俺が神などと言う誤解を説くためにじっくりと話をする必要がある。


「君の話は雲を掴むような話だけれど、今ボクたちがどういう状況に置かれているかは理解しているよ。だから、他に道がないことも。不甲斐ないオーナーに変わってお願いする」


 と、そこで言葉を切って姿勢を正し。


「どうかみんなを助けてください」


 そして、頭を下げたのは十代半ばにも満たないレニオ少年。


 一国のお姫さまや見世物小屋のオーナーより、見世物小屋の雑用係の方がそれらしい反応を見せるとはいったい世の中どうなっているのか。


 でも、俺としては俺の考えについての意見や感想、いや、深い議論を期待していたんだけども……。


 まあ、良い。


 もうみんなを城なしに乗せてしまおう。


 そんな訳でジュリな見世物小屋のみんなを率いて貰い、俺たちは再び城なしのへ向かうことにした。


 しかしその途中。


「オオオオオオ……!」


 突然、まるで突撃せんと言わんばかりの大声が遠くから聞こえてきた。


「なんだ? ポールランド兵がやけっぱちで突っ込んでくるのか?」


 俺は誰に語りかける訳でもなく一人ごちたのだが。


「その通りなのじゃ!」


 いつの間にやら側にいたシノが言葉を拾った。


「おやシノ。戻っていたのか。いったい何をしにローミャに行っていたんだ?」


「必要なものを仕入れに。じゃが、その話は後なのじゃ、ちと不味いことになっての」


「不味いこと?」


 さっきの事に関係した話だろうか。


「うむ。ローミャから兵が出た」


「ん? ローミャにいたポールランド兵か?」


「違うのじゃ。ポールランド兵ではない、ローミャ兵、いやヒゲリア兵なのじゃ」


「なんだって?」


 何かの間違いじゃないかとシノに聞き返すも間違いではないらしい。



 ヒゲリア兵が出撃に至った背景は──。


 我れ関せず、やるなら遠くでやれといった姿勢を貫くつもりだったヒゲリア。


 しかし、お姫さまを匿いあまつさえ抵抗を見せる見世物小屋にヒゲリアの関与が疑われる。


 その理由としては見世物小屋のオーナー、ジュリがヒゲリア人である事が挙げられた。


 実も蓋もない話ではあるし、事実ヒゲリアも何を言わんやとポールランドを突っぱねる。


 が、そこに現れたのがルーシアの使者だ。


 まあ、よく考えてみれば皇子一人ポールランドの兵に混ぜて出兵させる分けもなく。


 ともかく、ルーシアの使者が国力の差を武器に政治的な交渉をヒゲリアに持ち掛けた。


「その疑いを晴らしたくば姫の身柄確保に協力しろ。断ればどうなるかは……。分かるな?」


 否、ビゲリアを脅迫した。


 ──なんて事があったから兵を出さざるをえなくなったんだそうな。



「つまり、もうポールランド兵はローミャの街を気にかける必要は無くなって、ついでに皇子も地球外生命体さんもぐったりだから遠慮なく突撃してくるわけだな」


「うむ。それにポールランドの兵にヒゲリアの兵も加わって大軍勢なのじゃ」


「やれやれ、なにか始めようって時に入る邪魔ほどうっとうしいモノはないな……」


 はてさて、どうしたものかこの状況。


 ああ、専門家が目の前にいるんだ聞いてみりゃ良いか。


「シノならこの状況をどう切り抜ける?」


「そうじゃのう。向かい打つよりは打って出るべきか。となるとやはり狂竜を前面に押し出してローミャの街を先ずはとるかのう。そして──」


「ああうん。俺が悪かった」


 やはりシノに任せてはいけない。


「ジュリ! みんなを急がせてくれ! 城なしの上に上がってしまえば追ってはこれない」


「分かったわ!」


 俺は逃げの一手を選択。


 見世物小屋の人たちと供に城なしの元へと急いだ。

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