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百七十五話 天を貫く魔女の木

 お姫さまを助けるって決めた。

 自己紹介した。

 カミャった。



 そんなわけで2時間後。


 空では星がチカチカとまばたき、地上は俺たちを中心にして松明の灯りが円を描く。


 松明の灯りはポールランド兵が視界確保の為に焚いている訳ではなく、包囲による重圧をより効果的にするものだ。


 と言うのはシノの談。


 それはさておき2時間というのはジュリが魔女の木を完成させるための予想時間だ。


 魔女の木はどうなったのかと言うと。



「じゃーん。葉っぱでもさもさになりました!」


 両手で万歳してのたまうジュリ。


「ほー木っいな。暗くて良く見えんがな」


「イッちゃん。それは仕方がないのよ。火を焚いたら居場所がバレちゃうの」


「魔女の木はただでも目立つし、葉までもさったらいやがおうにもバレそうなもんだが」


 まあ、それよりもだ。


「完成したのなら早く外に出して欲しいんだが」


「ふふっ。焦っちゃダメよイッちゃん。ちゃーんと条件を満たせば直ぐに出られるわ」


「まだ何かする必要があるのか」


 完成すればそれで出られると思っていたのでモヤモヤする。


「そんな顔しないでイッちゃん。魔女の木は完成するまでは成長が止まった状態だったから、力を加えても実がなるだけだった。でも、完成したから今度は力を加えると成長する様になったわ」


「あー。なんか読めたぞ。要は枯れるまで力を加えて成長させれば、力を栄養に変えられなくなるから外に出られる様になるって話だな?」


「イッちゃんすごーい! まったくもってその通りなの。だから、なんとかして木を成長させてね」


 そうと決まれば話は早い。


「ツバーシャ! 出番だぞ。木の根っこをボコボコにしておくれ」


「嫌よ。ソレを叩いても手応えが無くてつまらないもの……」


「あー。飽きちゃってたかー」


 まあ、嫌と言うなら無理強いはすまい。


「そんなわけで狂竜。君の出番だ」


「だー?」


「たまにはパーッとなんもかもぶっ壊したいぐらい暴れたいだろう?」


「うー?」


 しかし、狂竜は首をこてんと傾げて不思議がるばかりで力を解放する気配を見せない。


 これは困ったな。


 俺が翼や魔法で木の根に力を加えても大した結果は望めない。


 ツバーシャがダメなら狂竜に頼るしかないんだが。


「うーん。許せ狂竜。あとでいっぱい良い子良い子してあげるから!」


 俺は覚悟を決めると狂竜の額に拳をつき出すと。



 ビシッ……!



 狂竜にデコピンした。



「ォォォォ……!」


 唸る狂竜。


 溢れでる竜の荒ぶるエネルギー。


 肌にそれを感じるだけで鳥肌が止まらない。


 しかし、そのエネルギーすらも吸いとり実を落としながら魔女の木は伸びていく。


「ォォォォ……。ォ……? ォォォォ……!」


 力を解放しても解放しても吸われてしまうのが不思議だったのか、わずかに首を傾げる狂竜。


 だが直後。


 いつもは心の奥深いところで理性がわずかに働き全力を出せていなかったんじゃないかってぐらいエネルギーを放出し始める。


 それでも魔女の木はエネルギーを吸い上げ、射られた矢のような早さで天に向かって伸びていく。


 やがて魔女の木は天を貫いた。


 おいおい。

 いつになったら枯れるんだ。

 こんなの狂竜がいなかったら死ぬまで出られなかっただろう。


 じっと、ジュリの目を見つめる。


「ふふっ。やだ私ったら。ちょっと危険な木を作っちゃたみたいだわ」


 ちょっとどころじゃあないわ。


「こ、これが、イギリシャ王国で破壊の限りを尽くした神の力……」


 あっ、お姫さまちゃんと神って言える様になったんだ。


 しかし、酷いな破壊の限りを尽くすって。


 いったい世界にはどれだけ脚色されて伝わっているんだ。


「神さま。やはり、あの時と同じ様に最後は天を地上に落とされるのでしょうか?」


「天? あっ、城なしの事か流石にそれは」


 無いと続け様としたところで。


「来るのです……」


 凛々しいお顔でお耳を立てたラビの警戒度MAXの来るのです警報。


「ラビ。いったい何が来るんだ? 魔物か?」


「落ちて来るのです……」


「ラビ? 落ちて来るって空に落ちてきそうなものなんてないだろう?」


「ご主人さま! 城なしが落ちて来るのです!」


 ああ、城なしがお空にいたか。

 しかし降りてくるでなく落ちてくる?

 いったいどう言うことだ?


 俺はラビの言葉に疑問を感じ空を見上げる。


 すると確かにそこには天高く伸びる魔女の木と落ちてくる城なしの姿があった。


 そこで俺はようやく事態を把握した。


「魔女の木が城なしを貫いたのかよ!」

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