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百七十四話 ちょっと有名になってた

 ポールランド兵に包囲されてた。

 ウチの地球外生命体さんとクララが暴れてた。

 クマった。



 なるほど、今俺がおかれた現状と地球外生命体さんが戦っている理由は良くわかった。


 そりゃあ、婚約相手が魔物まがいの巨大なクマじゃあ誰でも逃げ出すわな。


「ンンァベアー!」


 ねっとりと張り付くような雄叫びが戦場にこだまする。


 どうやら、地球外生命体コンビを同時に右手と左手でラリアットしてダウンを取れたのが嬉しい様だ。


 そんな光景を一瞥してうつ向くお姫さま。


「私はあの方と結婚したくはありません」


 そうな。


 これと結婚したいとか言うやつは気が狂れてると思うわ。


「ですが、多くの方にこれ以上ご迷惑をお掛けする事は心苦しく、逃亡は諦めニラコイ皇子との婚約を受け入れようかと思います」


「ダメよ! そんなのはダメ! あんなののお嫁さんになったら結婚式とお葬式をおんなじ日にすることになっちゃうわ!」


「それも致し方ありません。このままでは誰かが命を落とす事になります。そんな事になったら私は……」


 ふむ。


 話を聞いてしまった以上無下に知らぬふりは出来ないな。


「よし、俺が文字どおり絶対に誰の手も届かないところにお姫さまを連れて行くぞ」


「えっと、お気持ちは嬉しいのですが、顔も名前も知らない方にすがるわけには」


「じゃ自己紹介だ。俺の名前は出飼翼。信じられないかも知れないが、はるかお空の上で暮らしてる。顔は……。ほらっ」


 俺は袋をとって顔を見せた。


「キャー! イッちゃんの素顔だわ。思ってたほどでも無いけど、そこそこ割かし素敵よイッちゃん!」


「それ褒めてるの!?」


 なんだかジュリがまじまじと顔を覗くものだからちょっと恥ずかしい。


「つばさ……?」


 おや、お姫さまは俺の名前が気になるのだろうか。


 でも、視線は俺からややずれているところに向いているような……。


 あっ、翼を覆った布が捲れてら。

 穴から後退で這い出たからか。

 まあ、翼が生えてるのは珍しいからそりゃあそっちに目がいくか。


 そーら、俺の自慢の翼だとくと見るが良い。


 せっかくなので布を剥いで翼を広げて見せた。


 が。


「それにその後ろの割れた壺……」


 既にお姫さまの興味が他へ移っていた。


 何だかいたたまれない気分になったので俺は静かに翼を降ろす。


「イッちゃん凄いわ! 翼まで生えてるなんて私ビックリしちゃったわ」


「そ、そうか?」


 やっぱりジュリは見る目が違うな。


 ちょっぴり結婚したくなったわ。


 でも、お姫さまにもなんか言ってもらいたかったナー。


 チラリとお姫さまを見る。


 あっ、目が泳いだ。


 何ぞ?


 俺が不思議に思っていると、お姫さまは急に改まった口調で質問を口にする。


「えっと、つかぬ事をお聞きしますがあなた様は以前、イギリシャ国にお立ち寄りになられた事は?」


「ん? そう言えばそんな国に行ったことがあるような……」


「カミャッ……!」


 そして、謎の竒声を上げてヨロヨロと地面に膝をついてしまった。


「急に変な声をあげてどうしたの? イッちゃんの翼を見て感動しちゃった?」


「オーナー。このお方をイッちゃん等と呼んではなりません。というか、早く魔女の木から出して差し上げてください。このお方は……」


「イッちゃんがどうしたの?」


「このお方はカミャさまなんです!」


 カミャさまってなんだ。


 しかし、そう呼びたいなら仕方がない。


「えっと、どうもカミャさまです」


「カヒュ……!」


「た、大変! この子ったらチアノーゼ起こしちゃってる!」


 カミャさまやべえ、口にすると相手はチアノーゼに陥るのか。


「主さま……」


 俺がそんな阿呆な事を考えているとシノが小声で耳打ちしてきた。


「おおシノ、ちょうど良いところに。なあ、人を言葉でチアノーゼにする事って可能なのか?」


「そこな姫君の事かの? それはカミャさまと言う言葉ではなく、主さまを神さまだと思い気が狂うたんじゃと思う」


「いつから俺は神さまになったんだよ」


「イギリシャで大ほら吹いて神さま演じたのがこちらにも伝わっておるのじゃろう」


「あー……」


 壺がどうとか言っていたし、ポールランドのお姫さまだし、俺の事を知っていてもおかしくはないか。


 それに最初に出会った商人も城なしの壺の価値を知っていたしな。


「また、大ほら吹くかの?」


「いや、止めておこう。あんまりやり過ぎるとこの世界の神さまに怒られそうだし」


「わかったのじゃ……」


 わかったと言う割りに、シノの言葉は寂しそうだ。


 大ほら吹きたかったんだろうか。


「まあ、いいや。取り合えずこの場を何とかしよう。ジュリ、俺をここから出しておくれ」


 地球外生命体さんとクマ皇子の戦いは、端から見た感じでは、クマ皇子の方が優勢だ。


 なら、直ぐには事態が動く事は無いだろう。


「うん。わかったわ。なるべく早く終わるように私頑張っちゃうわ」


 外にさえ出られれば後はどうにでもなる。


 待ってろよ、チアノーゼのお姫さま。


 俺が空の世界へ連れていってやるからな!

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