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百七十話 ピーヒョロロ~

 ジュリエッタが現れた。

 結婚を申し込まれた。

 お友だちから始めてみた。



 いかん、このまま流されてしまったら、気が付けば温かな家庭が出来ていたなんて事になりかねん。


 あれ? 別にそれも悪く無いんじゃ?


 ジュリはアゴヒゲ美人で優しくて包容力もある。


 ちょっと頭のおかしなところはあるけれど、結婚相手としては申し分ないのではないだろうか。


 いやいやいや、ダメだ俺には城なしでの生活がある。


 どうにも女性に縁がなかったせいか浮かれてしまうみたいだ。


 とにかく何とかしないと。


 取り合えずレニオに泣きついてみる事にする。


「なあレニオ。どうにかならんかこの状況。俺には結婚なんてまだ早すぎる」


「もうどうにもならないよ。忘れてるかも知れないけど、君がそこから出られるかどうかはオーナーの気分次第なんだからね?」


「そうだった……」


 下手な事して気分を損ねたらずっとここから出られない。


 気分を損ねず結婚を回避するなんて器用な真似出きるかよ。


 でもやるだけやってみた。


「ジュリ。俺たちお友だちだろう? ちゃちゃっとこの魔女の木を完成させて出しておくれよ」


「うーん。ここからイッちゃんを出しちゃったら、そのままどこかに行っちゃいそうだからダメかなー?」


「そ、そんな事はないぞ?」


 ぬう。

 頭の中はほんわかぱっぱしていそうなのに変なとこで鋭い。


 やわり一筋縄ではいかないようだ。


 俺はどうしたものかと頭を悩ませた。


 が。



「ご主人さま。なんか聞こえるのです」



 ラビが異変を耳で感じ取ったのでそちらに意識を切り替える。


 変だな。


 いつもなら凛々しいお顔で“くるのです……”って言うところなんだがそうじゃない。


「ラビ、どんな音が聞こえるんだい?」


「ピーヒョロロ~なのです!」


「んー。そりゃトンビでも飛んでいるだけじゃないか?」


 特に何かが迫ってる訳では無さそうだ。


 俺はそう判断したのだが何やらレニオとジュリの表情が険しい。


「ピーヒョロロって事は……」


「そうねレニオ。どうやらまた来たみたい。しつこくて参っちゃうわね」


「せめて営業時間外にしてくれればいいのに」


 二人だけの世界で通じ合うレニオとジュリ。


「なんだなんだ。ピーヒョロロに何があるって言うんだ?」


 ちっとも話が見えないので俺は話に割り込んだ。


「あれは鳥の鳴き声じゃなくて笛の音なんだよ。もっとも、鳥の鳴き声に似せた笛だけどね」


「ほー。で、その笛がどうかしたのか?」


「イッちゃん落ち着いて聞いて、あの笛はね。戦争の合図なの」


 えっ? 戦争?


「おいおいおい。戦争ってのはこうも突然始まるモノなのか?」


「いや、それはおかしい。街の情報を集めに向かったとき、周辺国の間者とも接触を図ったのじゃがそんな話はなかったのじゃ」


「なにしてんのシノ!?」


 油断も隙もあったもんじゃない。


 いくら忍者とはいえスパイから情報を引き出すなんて危険すぎる。


 後でお説教しなくちゃな。


「まあ、国同士の戦争じゃなくて、ボクたちとポールランド王国の戦争だからね」


「レニオ。話は後よ。とにかくお客さんを巻き込まない為にも早く避難させないといけないわ」


「それはボクがやる。オーナーは見世物小屋の娘たちをお願い」


 それだけ言って二人はどこかに駆けて行った。


 いや、俺たちを出してからにしてくれよ。


 そう思いもしたが既に手遅れ。


「一体どうなってしまうんだ」


「まあ、焦っても仕方がないのじゃ」


「そうは言ってもな……」


 このままじゃ確実に巻き込まれてしまう。


 焦るなってのが無理な話しだ。


「仮に、じゃ。ここにポールランド王国とやらの兵が雪崩れ込んだとしても何も出来まいよ。この中にいる限り安全なのじゃ」


「それはそうかも知れないが、隙間から槍とかでぷすって刺されたら大変だろう?」


「主さまに傷をつけられる人間なんぞ、そうそう居ないのじゃ。心配には及ばん」


 それは買い被り過ぎだろう。


「俺は良いとしてもラビやシノは良くないだろうよ」


「ぬ? 主さまはわぁを守ってくれぬのか?」


「あれ? ご主人さまはラビを守ってくれないのです?」


 そりゃあ……。


「絶対に守り切るに決まってる」


「なら、問題なかろう。火でも放たれぬ限りどうにかなるなんて事は無いのじゃ」


 まあ、そうか。

 後ろ向きに考えて皆を不安にさせてもしょうがない。

 どうせ、ここからは動けないんだ。


「槍でも火でもどんと来いってんだ!」


「その粋なのじゃ……! い、いや、火はどんと来たら不味いのじゃ」


「ははっ。冗談だよ。確かに火を放たれたら不味いわな」


 火に触れて火傷はもとより、熱い煙は肺を焼くし、火が燃えれば酸素も無くなる。


 火事ってのはおっかないもんだ。


 だがまあ、折角前向きな気分になったんだ、


 考える事もあるまい。


「でもご主人さま? 天井がまっ赤に燃えているのです」


 えっ?

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