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百六十九話 じゃあまずはお友だちから始めましょう!

 ラビが泥んこまみれになった。

 ツバーシャが気を失った。

 レニオにまた怒られた。



 穴を掘っても脱出不可能。


 破壊しようにもあらゆるエネルギーは栄養に変えられてしまい実がなるばかり。


 選択肢は制作者がこの魔女の木を完成させるまで待つしかないときたもんだ。


「なら、制作者にあってヤル気を出してもらうしかないな。その人はこの見世物小屋にいるのか?」


「うん。と言うかすぐそこに──」


 レニオが言い終わるよりも早く。


「じゃーん! 呼ばれた気がしたので飛び出しました! 私が制作者のジュリエッタでーす!」


 レニオの背後から一人の女性が姿を現した。


「あっ! さっきのお姉さんなのです!」


 艶やかで柔らかそうなブロンドのアゴ髭美人。


 そう、この人は風で吹き飛ばされた布を捕まえてくれたお姉さんだった。


「うふふ。また会えて嬉しいわウサギなお嬢さん。そして、イズカイツバサ族のお兄さん」


「あ、先程はどうも。それに俺が袋を被っているせいで驚かせてしまったみたいですいません」


「あらあら、違うんですよ。さっきは心の準備が出来ていなかったものだからついつい逃げ出してしまったの。ごめんなさいね」


 おや、強盗だと誤解された訳じゃあなかったのか。


 しかし、心の準備とは?


 俺の事を詳しく知っているような口ぶりも気になる。


「何だかご主人さまのしゃべり方がいつもとちがって変なのです……」


「ん? ああ。出会いが出会いだったから、タメ口で話すわけにもいかないだろう。だから、丁寧な言葉遣いをしてたんだ」


「あら、これから末長くヨロシクしちゃう仲だものタメ口にしましょう? 私のことはジュリって気安く呼んでね」


「まあ、そう言ってもらえるならタメ口にするよ」


 何やら更に気になる言葉が出てきたがまあいい。


「えっと、俺の事はレニオから聞いてるのか?」


「もちろんよ。だって私はレニオのお姉ちゃんだもの。でも、あなたのお名前は知らないわ。教えてくれないかしら?」


「いや、出飼翼いずかいつばさなんだけど」


 レニオのお姉ちゃんって事はここのオーナーでもあるって事だな。


 パッと見た感じじゃ二十歳前後といったところなのに大したもんだ。


 しかも、この魔女の木の制作者であるというのだから驚きだ。


「うーん。イズカイツバサ族で名前もイズカイツバサって言うのはあんまりじゃないかしら。人間に人間って名前を付けるようなモノよ?」


「いや、それは……」


 確かにその通りなんだがこれを説明するのはめんどくさい。


 どうしたものかと悩んでいると。


「ハッ! URと言うことは他に同じ種族の人が存在しない種族。つまりご両親がいない。だからあれがそうなって、これがそうなって……」


 なにやら、勝手に俺の生い立ちと名付けの理由が創造され始めた様だ。


「辛かったのね。家族もなくてこの世界にひとりぼっち。でも、もう一人じゃないわ。私が今日からイッちゃんの家族になるんですもの!」


 どうしよう。


 何だかややこしい感じにこじれてしまった。


 しかもなんか俺にイッちゃんなんて愛称がついてるし。


「えっと、気持ちは嬉しいんだが、俺にはラビたちがいるから一人じゃないぞ?」


「ううん、大丈夫よ。この見世物小屋の娘たちはみんな家族なの。そこに2、3人増えたところで私の愛はかわらないわ。だからみんなで一緒に家族になりましょう?」


「ラビは家族じゃなくてご主人さまの奴隷なのです!」


 おっと、ここでラビの奴隷宣言。


 話がいよいよ収集のつかないことになりそうだ。


 なんて、思うも。


「そうね。家族には奴隷も必要よね。じゃあ、ウサギなお嬢さんは奴隷ちゃんね!」


「それなら良いのです!」


 何故か話が収束の方向へ。


「と言うことだからイッちゃんは私と結婚式を挙げましょう!」


 そして、明後日の方へと飛んでった。


「まてまてまて、色々おかしい。そもそも、俺をこの見世物小屋にスカウトしたいって話のハズだろう? それが何で結婚になるんだ」


「うふふ。実は始めから私はイッちゃんと結婚するつもりだったの。だってイッちゃんてばURなんだもの。きっと、結婚でもしない限り私の元には来てくれないと思ったわ」


「いや、結婚ってのはこんな簡単にホイホイするものじゃあないだろう。なんだその、まずはお友だちから始めて……。あれ? どうするんだ?」


 よく考えたら、結婚に至るまでのプロセスとか知らんかったわ。


 結婚どころか彼女……。


 いや、女友だちすらいたことない。


 俺は困った。


 どうすれば良いのかわからなってしまった。


「じゃあまずはお友だちから始めましょう!」


 しかし、ジュリは俺のレベルに合わせてくれるようだ。


 なんて、優しいんだ。


 って、そうじゃないわ!

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