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百五十三話 再会は頭の上からベランダで

 女の子についてった。

 なんと金魚すくいが現れた。

 ところがどっこい金魚すくいは珍魚すくいだった。



 珍魚。

 珍魚ねえ……。


 改めて桶の魚を見てみる。


 魚と言うと薄っぺらなイメージなんだがこいつはずんぐりむっくりとしている。


 コインサイズの小さな魚。


 背には黒のまだらが散らばり、その瞳は出目金の様に突きだし、唇は厚くたらこ唇という言葉がしっくりくる。


 こりゃまた不細工な魚がいたもんだ。


 しかし、俺にこの魚が珍しい魚なのかは分からない。


「ぎょ……?(興味ない?)」


「んー。そう言うワケじゃあないんだけどな」


 まさかこの世界で金魚すくいをお目にかかれるとは思っても見なかった。


 懐かしさついでにやってみてもいいかなとも思う。


 が。


「みんなとハグレてしまったのに一人で遊ぶのはしのびないよ」


「ぎょ?(みんな?)」


「うん。三人の女の子と金ぴかのドラ……。いや、トカゲと一緒だったんだ」


 つい流されてこの子に付いて来てしまったけれど、みんなを探して合流しないといけない。


 きっと心配している。


「ぎょぎょ?(それは長いお耳の女の子?)」


「そうそう。その子その子。あれ? 俺、ラビたちの事を話したっけ?」


「ぎょ──(それは──)」


 人魚の子が口を開きかけたその時。


「おおっ……!」


 背後の人だかりから感嘆の声が聞こえた。


 なんだなんだ?

 何か面白い芸でもやっているんだろうか。


 振り返れば聞き覚えのある声が耳に届く。


「ご主人さまー!」


「ん? ラビ? どこだ? どこにいるんだ?」


「こっちなのです! 上なのです!」


 上?

 なんで上?


「てっ、なんじゃこりゃ!」


 言われて上を見上げると迫り来るベランダ。


 慌てて身構えるもソレの動きはゆったりとしたもので、更には人を潰さないように人が退くのを待ってから俺の足元に着地する。


「ご主人さま探したのです!」


「すー」


 するとラビが狂竜抱えてベランダから降りてきた。


「ラビではなくまさか主さまがハグレるとは思わなかったのじゃ」


「目立ちたくないのに。みんなこっちを見ているわ……」


 シノとツバーシャも一緒だ。


「すまん。色々あったんだ。それよりみんなが乗ってきたそのベランダはなんなんだ?」


 リフトの様なモノみたいだが、そんなものはこの世界にはないだろう。


「それベランダじゃないんだけど」


「ん? あれ? レニオも一緒だったのか」


「うん。君を探すためにね」


 それは悪いことをしてしまったな。


「忙しいだろうにすまないな」


「これも仕事だよ」


「そうか。で、このベランダは?」


「だからベランダじゃないよ。良く見てみて」


 見ても良くわからんのだが。


 ベランダの広さは畳二枚分程度で、フェンスに囲まれている。


 その後からはピンクいろのアームがのびていてこれがリフトを動かしている。


 更にアームを追っていくと。


「ムガー?」


 そこには大きな顔。

 俺はこの顔を知っている。

 これは地球外生命体さんだ。


 なんとベランダリフトの正体は地球外生命体さんの腕だったのだ。


「なんでコイツがこんなところに……」


「そうだよね。この子たちも知っていたみたいだし君も知っているよね。でも彼は君たちの知っている人とは別の人だよ。ウチでは一番の目玉なんだけどね」


「別人? 他にもいたのか」


 別人と言われてみれば声が俺の知ってる地球外生命体さんとは違う。


 襲ってこないし。


「彼にはこうして迷子の保護者探しや、団員の移動手段。そして、子供たちを手に載せて楽しんでもらうお手伝いをしてもらっているんだ」


 なんとまあ、別人というだけでこうも違うもんなのか。


 俺の知ってる地球外生命体にそんな事をさせた日にはお客を投げとばしかねんな。


 と、そこでなんのけなしにレニオとの会話は途切れた。


 すると待ってましたとラビが俺の腕を引く。


「ご主人さまご主人さま……」


 なんだかよそよそしい。


「ん。どうしたんだいラビ。何かあったのか?」


「これ、ご主人さまの分なのです!」


 そういってラビは串を差し出してくる。


「おお。何だか良くわからんがありがとう」


 どうやら、俺のために食べ物を買ってきてくれたようだ。


 串には丸いものが3つ刺さっている。

 団子……。

 いや、これはジャガ芋?


 串の一番上にはバターが刺さっている。

 焼かれた芋の熱でそのバターがじょじょに溶けては重力に引かれ芋に絡まる。


 ほほう。

 これは面白いジャガバタだ。

 香りもたまらん。


「食べるのです!」


「ああ、そうだな。はふっ……」


 俺はバターの真下にある芋にかぶり付いた。


 懐かしい香りが口いっぱいに広がる。

 なんといっても芋の皮付きなのが良い。

 この土臭さがたまらん。


 ああ、ホクホクしている。


 塩も絶妙な加減で芋の味を引き立てているな。


 おや、このジャガイモはただ焼いただけのモノでは無いようだ。


 これは一度蒸かした芋を火で炙ってあるな。

 なかなか手間暇かけているじゃあないか。

 蒸した芋を串に刺して安定させるのには技がいるだろうに。


 すばらしいな!


「うん。うまいなこれ」

 

「喜んでもらえて良かったのです!」


「ああ、ありがとうラビ」


 って、あれ?

 お金はどうしたんだろう。

 干し芋の代金は俺が預かっているんだが。


 チラリとレニオに目配せすると首を横に振る。


 どうやらサービスしてくれた様だ。


 みんなと合流出来たし良いもの食えたし、めでたしもでたし。


「ぎょ……(珍魚すくい……)」


 あっ、珍魚の事をすっかり忘れてた。

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