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百四十八話 代金は干し芋でいいか?

申し訳ありません。

百四十九話から百五十一話まで質の低下があまりにも酷かったため削除しました。

今しばらく時間を下さい。

 ラビにおヒゲを付けた。

 シノにおヒゲを付けた。

 俺はツバーシャと袋を被った。



 一応翼も隠しておこうかな。


 布を翼にかければ背荷物に早変わり。


 下から見上げられたら見付かってしまうけれど、男の尻を這いつくばって見上げる変態なんぞおらんだろう。


「さあ、あの列に並ぼう。周りの人の迷惑になるから騒いだりしちゃあダメだよ。静かにね……!」


 そこでひと工夫。


 “静かにね”の部分をヒソヒソ声で言ってみせた。


「分かったのです……! ラビは静かにするのです……!」


「すー……!」


 するとラビと狂竜もつられてヒソヒソ声になる。


「そうかそうか。良い子だ」


 マナーをちょっと楽しく学べる魔法だ。


 ただまあ、すぐに忘れて長続きはしなかったりする。


「主さま。その頭に被った袋でだいぶ視線を集めているみたいじゃが大丈夫なのかのう?」


「はは。大丈夫ダヨ、なにも心配いらないヨ……」


「でも、目が虚ろなのじゃ」


 列に並ぶ人たちは皆ヒゲ面だが、むさ苦しい感じはせず、むしろ、暖かみを感じる面構えだ。


 例えば、ふたつ前にならぶお姉さんは揉み上げからアゴ下までヒゲが繋がる毛深さっぷり。


 しかし、そのふんわりとしたヒゲと目尻に向かって優しく下がるタレ目でとても穏やかに見える。


 この国の人たちは皆こんな感じの顔つきをしているので視線によるダメージは少ない。


 それでも視線が大量に集まれば苦しいことには変わりないが……。


 なぜ人はこうも容易く視線を突き刺してくれるのか。


 いつだって俺が被害者だ。


 ん? 被害者?


 そこで俺は思いたった。


 なぜ被害者である必要があるのか。


 そうだ加害者になってやろう。

 やられる前にやってやろう。

 それなら俺の心が傷つく事もないハズだ。


 なぜ今までこの考えに至らなかったのか!


 さっそく片っ端から睨み付ける。


 キッ。


 スッ。


 ほら、視線を反らした。

 攻撃は最大の防御なりとは良くいったものだ。


「それ、良いわね……」


「そうだろうそうだろう」


「私もやるわ……」


 おお、仲間が増えた。


 二人になればもうなにも怖いものなどない!

 今この瞬間この場所は俺たちが完全に支配している。


 キッ、キッ。


 スッ。スッ。


 もうなにも恐れることなどない!

 俺たちは自由なのだ。


 キッ、キッ。


 トントン。 


 ん? トントン?


「ちょっとちょっと困るよ君たち。なんで他のお客さんを威嚇しているのさ。迷惑だからやめてよね」


 自由じゃなかった。


 声を掛けてきたのは燕みたいに尾の別れた黒服に身を包む少年。

 

 少年は鼻の下に生やした長いカールのヒゲを弄りながらお説教をする。


 これが強面のおじさんだったら、どうって事はなかった。


 しかし、彼はずっと歳下の少年だ。


 俺の心はとてもいたたまれない。


「君たちをあそこに並ばせてたら色々めんどうだ。こっちに来てね」


「ま、待ってくれ。俺たちは悪さをしようってわけじゃあないんだ。追い出さないでくれ」


「うんうん。君たちは悪い人たちでは無さそうだ。でも不穏だから、順番が来るまで隔離されててね」


 なんだ場所を変えるだけか。

 良かった。

 どうやら入れてもらえはする様だ。


「そうだ。先に入場料をもらってもいいかな?」


 あっ、すっかり金の事を忘れてた。

 これは困ったな。


「なあ、代金は干し芋でいいか?」


「良いワケがないよね? なんで干し芋で許されると思ったの?」


「まあ、そう言わずにひとつ食べてみておくれよ」


「え、えー……? あっ、おいしい」


「そうだろうそうだろう」


 ちょっと顔がほころぶ。

 食べ物は人を幸せにするのだ。


「でもダメ! お金が無いなら入れてあげられないよ」


 だめかぁ。

 人の幸せとはかくも儚いものなのだ。


「ご主人さま……」


 ああ、ラビが悲しそうだ。

 だが──。


「心配いらないよ。お金が無ければ稼げば良いんだ。皆でお店を開こう!」

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