百三十話 ごめんなさい……。
竜たちに狂竜を押し付けられた。
慎んでそれを受け入れた。
おみやげいっぱいもらった。
帰りを渋るツバーシャをなんとか説得して城なしに戻ると、ラビがとてとて駆けてきて迎えてくれた。
「ご主人さまおかえりなさいなのです!」
「ああ。ただいま」
近くにまでやって来たラビの頭をわっしわっしとなでてやる。
やっぱり城なしが一番落ち着くなあ。
ドラゴン渓も暮らしにくかった訳じゃあないけど知らないひといっぱいいたしね。
しばらくはここでゆっくりしたい。
「あれ? ご主人さま。そのでっぷりとしたトカゲは──」
ラビは俺の腹に張り付いたままの狂竜をまじまじと見つめるととんでもない事をのたまう。
「丸焼きにして食べるのです?」
「食べないよ!?」
そんな事をしようものならこっちが丸焼きにされるわ。
ドラゴン渓で対峙した時は火とか吹いてなかったけど吹いてもおかしくない。
ツバーシャだって火を吹けるし……。
あっ、そうだ。
ツバーシャだよ。
「ほらっ。ツバーシャ。ラビに言うことがあるんだろう?」
相変わらず俺の後ろで縮こまるツバーシャに声を掛けた。
忙しなく視線をさ迷わせていて見ていると少し不安になる。
「べべべ、別に言うことなんて……」
「あっ、そうだ! ツバーシャちゃんにも見て欲しいのです!」
そう言ってぐいぐいと、ラビはツバーシャをマイホームへと引っ張って行く。
ラビにはツバーシャの言葉を聞いてほしいところだけれど、ここでなくても構わないか。
あまり、余計な事をすると意地を張りそうだ。
「あー……。かったるいのじゃー……」
マイホームではシノが寝腐ってた。
てことは、また雨が振りだしたのかな?
「ただいまシノ」
「あー……」
「いや、そこはしゃんとしようよ」
なんて注意をしても気だるげに唸るばかりだったので捨て置く事にする。
「ツバーシャちゃんこれ」
ラビが部屋の隅から、何やらごそごそと冊子を取り出してツバーシャに見せる。
「おシノちゃんに直してもらったのです!」
ツバーシャの手によって無惨にも両断されたラビの宝物だ。
シノによって修復されたそれは、まるで何事もなかったかのようにきれいにくっついていた。
補強のため、綴じ代に張り付けられた板が、以前より立派なものに魅せている。
「そ、そう。良かったわね。それでその事なんだけど……」
おおっ。
とうとう。とうとうこの時が!
頑張れツバーシャ!
俺は心のなかで力強くツバーシャを応援した。
「はい。だからこの事はもう気にすることはないのです!」
しかし、ラビは事を終わらせようとしている。
あー。
まあ、それでも良いのかも知れないな。
ラビの気持ちとしては済んだ事になっているみたいだしこれで決着かな。
ラビの宝物が壊れてしまってから始まったツバーシャの冒険もここで終わりなのだ。
だが、そこで奇跡が起きる。
「そうはいかないわ。私はラビに言うことが……」
なんと、それでもツバーシャは言葉を続けようとしているのだ。
ああ、ツバーシャ。
なんて、立派になって……。
しかし、ラビにはツバーシャの心中はわからない。
「そうだ。これだけじゃないのです!」
言ってラビはもう一冊の冊子を取り出した。
「妖精さんが、作ってくれたのです!」
見ればそれは、ラビのカタログを真似た手描きのカタログだった。
小さいから細部まで良く筆が届くようで、なかなかどうして上手に出来ている。
ちょっとした絵画みたいだ。
って、思わず感心してしまった。
今はそんな場合じゃあない。
「ラビ。ちょっとだけで良いからツバーシャの話を聞いてやっておくれ」
「ツバーシャちゃんの?」
ラビはくりっくりしお目めでツバーシャを見つめる。
可愛いのだが、今のツバーシャには凶器だ。
ツバーシャが小刻みに震えてしまってる。
大丈夫だろうか?
「わわわっ、わわっ、わたたたた……」
大丈夫じゃなかった!
なんかどこぞのカンフーヒーロー見たくなってる!
もうダメなんだろうか。
俺が諦めかけたその時。
ツバーシャがふっ切れた。
「えええい! これよ! これ!」
叫ぶように声をひねり出しながら、ツバーシャは自分の鞄をひっくり返す。
そこからゴロゴロと出てくる大量の箱。
アイテムボックスだ。
「これだけあれば、私が壊したところで代わりはいくらでもあるわ!」
地方によって差があるから、代わりにはならないだろうけれど、今、それを言うのは無粋だろう。
「ツバーシャちゃん……」
「な、なによ……?」
「ラビのためにこんなにたくさんありがとうなのです!」
まさか、感謝の言葉が返ってくるとは思わなかったのか、ツバーシャの顔が驚きに染まる。
「別にあんたのためじゃないわ! 私が壊しても良いように持ってきたんだから!」
そう言ってツバーシャは逃げ出した。
「えっと……。どういうことなのです?」
「それは、俺からは言えないかなあ」
まあ、ツバーシャはかなり頑張った方だろう。
お土産にもらったドラゴンフルーツでも持っていってあげようかな。
そう思い、かまどのところへ向かおうとして振り返るとツバーシャがいた。
「うおっ!?」
まさか戻って来るとは思わず声をあげてしまった。
しかし、そんな俺には目もくれず、ツバーシャはラビをじっと見つめると。
「ごめんなさい……」
ともすれば、消え入りそうな声で言葉をこぼす。
そして直ぐにまた逃げるように飛び出していった。
それからしばらくして。
ツバーシャの件はそれで全て丸く収まった。
色々あったので、ゆっくりしようと決めたのだが。
のっぴきならない事態に俺は翻弄されていた。
そののっぴきならない事態とは。
「つ、ツバーシャ。やっぱりオムツとかいるのかな?」
そう。子育てだ。
改めて、意識すると何をしたらわからなくてパニックになってしまった。
「いらないわよ。私がトイレに入ったところを見たことないでしょ……?」
「じゃ、じゃあ、おっぱいは? 逆立ちしたって俺には出せそうにないんだが」
「竜は食べなくても死なないわ……」
いや、それでいいのか?
本当にそれで大丈夫なのか?
って!?
「こ、こら。石ころなんて飲み込んじゃあダメだ」
「大丈夫よ。竜は何を食べても死なないわ……」
「さすがにそれはツバーシャだけじゃないのか!?」
こんな感じで当分はゆっくり出来そうにない。
「ママ!」
それでも、自分をママと呼ぶ狂竜を見るとこう言うのも悪くないかなと思えた。
十章城なしまとめ
施設
・かまど
・トイレ
・トイレ:お客さん用
・忍者ハウス
・壺ぶろ
・コンポスト
・城
・ぷちラビの浮き島
家畜、魚
・すずめ
・ニワトリ
・ヤマメ
・サケ
・イワシ
・サンマ
・マグロ
畑など
・さつま芋の壺畑
・大豆の壺畑
・米の壺田んぼ
・シイタケ
・オクラの壺畑
・ポップコーンの壺畑
・ウコンの壺畑
果樹など
・バナナ
・サルナシ
・ヤマグリ
・竹
・クルミ
・お茶
・パイナップル
・オレンジ
・白桃
・ドラゴンフルーツ new!!
・竜眼 new!!
その他
・城なしの子供『城なち』
・水源
・川:トイレ直行
・川:池通過
・川:サケ用
・海
・池




