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空を飛ぶしか能がないから空の上で暮らすわ 〜ご主人さまはすごいのです!~  作者: つばさ
十章 ひきこもり飛竜(ワイバーン)嵐の家出
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百二十七話 地の底よりいでし狂竜(ベイビー)

 爺さんが干し芋を求めてきた。

 畑作った。

 ツバーシャがまたやらかした。



 凄いぜツバーシャ!

 流石ツバーシャ!

 再会と同時に特大級のトラブルを起こしやがった!


 ぶっとんだ惨状を目にした俺は早速現実から目を背けたくなった。


「えっと、それで壊れてしまったらどうなるんだ?」


「竜とは力そのもの。あのドラゴン岩にはそれを竜という形に正しく収める力がありますの。つまり」


「つまり?」


「ドラゴン岩が破壊されれば、産まれてくる竜の中で力が暴れだし、竜は暴走する……」


 なんてこったい。

 いやしかし、ここはドラゴン渓。

 そら頼もしい竜たちがいる。


「暴走しても抑えられるんじゃあないのか?」


「ええ。以前、産まれてきた竜が暴走した時には、数でもって抑えつけました」


「それならなんとかなるんじゃ……」


「その代償がこれですの」


 テルルがドラゴン渓を指さす。


「まさか、竜が暴れてこの渓ができたと?」


「はい……」


「うわあ……」


 なんてことしてくれたんだツバーシャは。


「なんとか次の竜が産まれてくる前に岩を直せないのか?」


「もちろん。手は尽くしますが間に合うかどうか」


「猶予はどのぐらいあるんだ?」


「二週間ほどかと」


 ふむ。

 どうやら、すぐにどうにかなってしまうわけでは無いようだ。


 ともかく今はツバーシャの元へ向かうことにした。



 ツバーシャは、たくさんの人。

 いや、竜に囲まれて縮こまっていた。

 人の姿に戻って袋を被っている。


「まったく、なんてことをしてくれたんだ」

「ふらっと渓から去っていったと思ったら、ふらっと帰ってきてこのありさまだ」

「どこまで迷惑をかければ気がすむのだ」


「私は悪くない私は悪くない……」


 悪くないって……。


 半分。

 いや、七割。

 いやいや、やっぱり全部ツバーシャが悪いわ。


 しかしながら、だからといって、俺までツバーシャを責めるのは違うだろう。


 ここは保護者としてなんとしても庇ってやらなければならん。


 俺は、ツバーシャを取り囲む竜を割って先に進む。


「あー。すんません。通してください。関係者です。その飛竜は俺の家族なんです!」


「「「家族!?」」」


 ん? なんでそんなに驚くんだ?


 あふっ。

 クラっときた。

 いかん、いっせいにこっちを向くもんだから発作が。


 慌てて、鞄から袋を取り出すと俺もそれを被った。


「まさか、この天災みたいな飛竜を家族にしようだなんて狂った奴がいようとは」

「いったい何者なのだ?」

「干し芋だそうだ。なんでも、手のつけられない幼竜クソガキに渇を入れたりもしたとか」


 にわかに騒がしくなった隙をついてツバーシャのところへ向かう。


 しかし、どうしたもんか。

 逃げるか?

 空飛べるし地の果てまで追って来そう。

 タフだし撃退とかきっとしんどい。


 やっかいなところでやらかしてくれたもんだ。


「ツバーシャ!」


「えっ? つ、つ、ツバサ!? なんでこんなところに!?」


「そりゃ、突然居なくなったら探すに決まっているだろう」


 なんでそんなに取り乱すんだろう。

 ツバーシャらしくもない。


「べべべべつに何かしてたわけじゃあないわ!」


「いや、たった今、極めて大変なことして大事になっているだろう」


「えっ? そっちなの……?」


 うん!?

 まだ何かやらかしているのか?

 って、そうか。

 もう一つはテルルと大老連れ回していたことか。

 

 そんな事はこの惨状に比べたら些細なことだ。

 しかし、ツバーシャにとっては違うらしい。


「ふぉっ、ふぉっ。派手にやらしたようじゃな」


「フン……! 私はただ地面に降り立っただけだわ……」


「相変わらずじゃな。流石はこのドラゴン渓を作り上げただけの事はある」


 さらっととんでもない新事実が出てきた。


「それは、もしかして以前暴走した竜というのはツバーシャと言うことなのか?」


「左様。思えば産まれた瞬間から手に終えんやつじゃった」


「そんな昔の事知らないわよ……」


 ツバーシャは面白くなさそうに顔を背ける。


「ほれお前たち。騒いでいる暇があったらとっととドラゴン岩を修復する作業に取りかからんかい」


「しかし、大老……」


「責任の追及なんていつでも出来るじゃろう。事が終ってから好きなだけ追及するが良い」


 何か言いたそうな竜たちだったが、ちゃくちゃくと作業に取りかかっていった。


 だが、それはすぐに中断される事になる。


 ピシッ……!


 初めは小さな音だった。


「ん? 今なにか聞こえたような」


「何かが割れるような音ね。私にも聞こえたわ……」


「何かが割れるような音ですの!?」


 いつの間にやら近くに来ていたテルルが、血相を変えて泥まみれになることも省みずに地面に耳をあてる。


 そして、しばらくするとガバッと顔を上げた。


「竜が産まれようとしていますわ!」


「なっ、なんじゃと!?」


「竜が産まれてくるのは二週間後じゃなかったのか?」


「そう。まだ新たな竜が産まれてくるには時間がかかるハズなのに……」


 言いながら、俺を見てハッとする。


「竜の血の影響ですわ!」


「なんと! ぬかっておったわい!」


「ああ。あれか……」


 どうやら事態は急転し、一刻の猶予も無いようだ。


「何か手はないのか?」


「あっても、もう出遅れじゃ」


「えっ?」


 ピシッ……。

 ピシピシピシッ……。

 バキっ……。


 ゴゴゴゴゴ……!


 地を割って出来たようなドラゴン渓。

 その底に地を割って新たに渓が出来ていく。

 そんなあらたな渓底から唸り声が聞こえてくる。


「ォォォ……!」


「元気なうぶ声だな」


「うむ。さぞや立派な竜になろうぞ」


「な、何をのんきなことをおっしゃいますの? 来ますわ!」


 テルルがそう言った次の瞬間には竜が姿を現していた。


 衝撃波を伴う速度で穴から飛び出し、遥か頭上で静止する。


「おおっ。まっ金々だ」


「ど派手でカッコ良いのう。わしも金ぴかが良かった」


「竜の価値観はちょっと理解できんわ」


 狂竜とでも呼ぶべき巨大な竜は、その姿を見せつけるように両のツバサを掲げ、地上を見下ろしていた。


 でっかいなあ。

 ツバーシャ30匹分ぐらいあるんじゃなかろうか。

 あんなでかさで良く空を飛べる。


 と言うか羽ばたいてすらいないのに飛んでる。

 いやむしろ止まってるし。

 やだなあ。そう言う飛びかたされるの。


「さて、どうしたもんかのう。いささか以前より大きい気がするんじゃが」


「前はどのぐらいだったんだ?」


「せいぜい通常の竜の三倍といったところですの」


 それってもうどうにもならないんじゃ……。

 これからどうなってしまうんだろう。

 あっ、そうだ。


「なあ。大老は未来が見えるんだろ? なら、対処の仕方も知っているよな?」


「知らんわい」


「はいっ?」


 あんまりな返答だったので声が裏返ってしまった。


「見えるのはわし自ら望んだら未来ではなく、わしに会いに来たものたちの未来」


「じゃあ、俺はこのあとの未来を望むわ」


「干し芋の未来は既に見えているからそれは無理じゃ。なまじ干し芋がこの先の未来を望んでいたとしても、望んだ未来が必ずしも未来が見えたわけでは無い」


 結構制約が多いみたいだ。

 良くわからんが、いまこの状況で役に立ちそうも無いことがわかった。


 俺たちはただただ狂竜を見上げることしか出来そうにない。


 だがツバーシャは立ち上がる。


「私がなんとかするわよ……」


「ツバーシャ。なんとかって、何をする気なんだ?」


「力づくで抑えつけるわ……」


 いやいやいや。

 大きさが違いすぎる。

 いくらなんでもそれは無謀だ。


 止めにかかるも。


「ルガアアアアア……!」


 すぐさま飛竜の姿になったツバーシャは、狂竜めがけて飛んでいった。

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