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空を飛ぶしか能がないから空の上で暮らすわ 〜ご主人さまはすごいのです!~  作者: つばさ
十章 ひきこもり飛竜(ワイバーン)嵐の家出
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百二十二話 酔っぱらい、博識、眼鏡

 竜を下した。

 お嫁にいけなくなった。

 白い飛竜もやってきた。



 それからしばらく俺はベッドに転がっていた。


 だが安静にしていなきゃいけない。

 そう思えば思うほど何かしたくなるわけで。

 まあ、つまり俺はこっそりベッドから抜け出した。


 洞窟の入り口からそっと外の様子を伺う。

 今だ嵐のまっただ中なので行き交う人の姿はない。

 地面は舗装されていないので川みたいになってる。


「これじゃあ出歩くのは難しいな……」


 カサとかカッパみたいな雨具もないし。

 今度シノに作ってもらおうか。

 今のままじゃ一歩踏み出すだけで泥まみれだ。


 って、あれ……?


 そこでふと、自分の体がキレイになっている事に気が付いた。


 気を失っている間に拭いてくれたのか。

 服もいつものボロから僧侶が着そうなローブになってるし……。


 色々沸き上がってくる感情もあったが俺は考えるのをやめた。


 ザアザアと絶え間なく響く雨の音に耳を傾けながらなんとなく反対側の崖に空いた穴の数を数えていく。


 途中、俺と同じ様に入り口に立っている人を何人か見かけた。


 竜ってのは人の姿で生活しているのか。

 まあ、竜のままじゃあ体が邪魔になるよな。

 

 そんな事を考えながら順に穴を追っていくと、何やら手を振る人の姿が目にはいった。


「俺を呼んでいるのか?」


 いや、でも間違ってたら恥ずかしいし。


 街を歩いていて前方で手を振る人を見掛けて手を振り返したら他人だった。

 そんな失敗を重ねた身としては慎重にならざるをえない。


 何度その場から走り去ったことか。


 なので放置してみた。


 だが、一向に手を振るのを止める気配はない。


 まだだ。

 まだ俺に手を振っていると決まった訳じゃあない。

 慎重に慎重を重ねるんだ。


 俺は更に粘った。


 すると、手を振る人は手を振るのを止める。


 ほら、やっぱり勘違いだったに違いない。


 しかし、そこで相手は暴挙に出た。

 顔をまっかにして岩を投げてきたのだ。


「ちょっ、うえええ!? そっからここまで30メートルはあるのに!」


 ドッポーン……!


 目の前に着弾し、激しく水しぶきがあがる。


 直前に【風見鶏】を発動させたので辛うじて泥まみれの難は逃れた。


 なんて事をするんだ。

 用があるならそっちから出向いておくれよ。


 ともあれ、さしもの俺もここまでされれば自分が呼ばれているのだとわかった。


 これ以上岩を投げられても困るので、呼び掛けもとへ向かう。

 

「おう。ちゃんとこっちに来たな干し芋」


 俺は犬か何かか。


 岩を投げてきたのはおっさんだった。

 酒が入っているのか頬が赤い。

 そして、この酔っぱらいも俺を干し芋と呼ぶ。


「それでいったいなんの用なんだ?」


「いやなに。干し芋の世話をして欲しいと頼まれたんだが、雨のなか外に出るのはおっくうでな」


「なるほど。そしたらちょうど良く俺の姿が見えたから呼んでみたと」


「ああ。しかし、人間が岩投げない反応しないのは知らんかったわ。まあ次からは真っ先に岩を投げる事にするよ」


 いや、ひと様に向かって岩を投げるんじゃあない。


 変な知識を身につけて、俺以外の人間に岩を投げつけるようになっても困るので釘を刺しておいた。


「なんだ違うのか。そりゃ悪いことをしたな。なにぶん人間の世話をするのは初めてで勝手がわからねえ。ん? 人間だよな?」


「人間が珍しいのか?」


「月に数人程度はやってくる人間もいるが、羽生やした奴は見たことねえ」


 おっと。うっかり、翼が生えているのを忘れてた。


「まあ、こんななりでも一応は人間だよ」


「そうなのか? まあ、こまけえことはいいか」


「いいえ良くないわ。彼は人間ではない」


 おや? 突然女の人が会話に割って入ってきた。

 キリッとした瞳でなんだか賢そう。


「翼の生えた人間なんていない。空を飛べるなら活動範囲も広いだろうし、もっと早くに私たちと接触していないとおかしいわ」


「それは……」


 どうしよう。

 まさか突っ込まれるとは思ってなかった。

 全部話しても構わないんだが、それで納得してくれるものだろうか。


「日出国には天狗と呼ばれる翼の生えた人間がいるそうですよ」


 俺が戸惑っていると更に人が増えた。

 眼鏡を掛けたひょろながの男。


「天狗は妖怪で人ではないし、鼻が長いのよアレ」


「ほお。詳しいな博識。なら、干し芋がなんなのかわかるのか?」


「わからないけれど、それなら考えればいい」


 酔っぱらい、博識、眼鏡。

 不思議な組み合わせだ。

 接点が無さそうに見えるんだが。


「おそらくは突如発生した新種。きっと彼がこの人種の始まり」


 おお。ズバリ見抜かれた。

 博識の名はダテじゃあない様だ。

 しかし、眼鏡は反論する。


「突拍子も無い発想ですね。根拠はどこに?」


「私が今まで見たことも聞いたこともない」


「確かに博識の見識にないと言うのは説得力がありますが──」


 何やら熱い議論が始まってしまった。

 俺ひとり置いてきぼりだ。


「なあ、干し芋。腹減ってねえか?」


 違った。

 酔っぱらいもついていけてなかった。


「そう言えばだいぶ腹が減ってる気がする」


「よし来た任せろ。干し芋の世話係当番の俺が飯を用意してやる」


「なにその役職」


 小学校の飼育委員みたいでなんか嫌だ。


 ともあれ俺は洞窟の奥に案内された。

 ここはカウンターが備え付けられ、奥の棚には酒が並んでいる。

 ちょっとした飲み屋みたいだ。


 俺はカウンターではなく四角いテーブルに備え付けられたイスに座るよう促された。


「ちょうど新鮮なのを届けさせたんだ。たんと食え」


 ドン!

 ミシリ……。


 皿の上に新鮮なのとやらが置かれ、下の皿にヒビが入る。


「こ、これは……!?」


 饅頭みたいに丸まった子パンダが激しく震えてる。

 いや、確かに新鮮だよ?

 未調理だもん。

 

「おい。まて、待って、なんだコレは?」


「ん? 知らんのか? パンダだ」


「いや、それは知ってる。なんでパンダなんだよ」


「人間も肉を喰うって聞いているからな」


 だから、なぜそれでパンダをチョイスしたのか。

 そりゃ、この辺りじゃ結構な頻度で見掛けたけど。

 どうしようこの震える子パンダ。


「ちょっと、何を食べさせようとしてるんですか」


「ん? なんだ? お前ら干し芋がなんなのかって結論は出たのか?」


「干し芋類干し芋科干し芋目干し芋という結論で決着が着いた」


 なぜそうなった。


 最初の見解であってたのに全力で脱線して突き抜けてやがる。

 近代的な分類法にもかかわらず、霊長類にすら分類されてないのには悪意すら感じる。


「そうか。干し芋だしな」


「納得しちゃうの!?」


「まあ、それより飯だ。パンダがダメなら干し芋は何を食べるんだ?」


 さらっと流された。

 しかし、震える子パンダが気になるので追及は避けた方が良さそうだ。


「人間と同じ食べ物だよ」


「人間はパンダを喰わんのか……」


「いや、そんなにガッカリしないでおくれよ」


 どんだけパンダを喰わせたかったんだ。


「ちょうど僕が人間でも、食べられそうな果物を持ってきてるよ。賭けに使うつもりだったからね」


「私も果物を持ってきている。賭けるために」


「賭け? 博打でもするのか?」


「あー。大老が連れ去られちまったから面子が足りなかったんだが、ちょうどいいかもしんねえな」


 酒臭い息を吐きながら、酔っぱらいがテーブルから子パンダをどかし、上の板をひっくり返す。


 そして、現れる緑の絨毯の様な物が打ち付けられた卓。


 これはもしや……。


「よし、そんじゃ、干し芋の飯を掛けて『じゃんじゃんドラドラドラゴンマージャン』を始めようか」

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