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百十七話 隠れん暴決着

 ツバーシャが暴れた。

 シスがすごいことしてた。

 俺も騙された。



「くそがっ!」


 オージーが喚き、足元に転がっていたシノの木彫り人形を蹴飛ばす。


 この人形はシノのが身代わりの術を使うときに触媒としたもの。


 いつまで経っても退場にならないシノの身代わりの術に不振を抱かれ、とうとう身代わりだと見破られたのだ。


「どこまでもバカにしやがって!」


 更にもう一発。

 今度はラビの木彫り人形が蹴り飛ばされ、先に蹴り飛ばされたシノ人形にぶつかり鈍い音がする。


 身代わりの術は一体ではない。

 二体あったのだ。

 つまり、残っているのはラビとシノの二人。


「ふーん。なかなかやるじゃないか。あれだけ取り乱していたら、冷静な判断なんて出来やしないだろう」


「だと良いんだけどな」


 このまま、普通に隠れているだけで勝てるほど甘くは無いだろう。


 だからこそ、動きのある策を二人には授けている。


「さて、そろそろ始まるかな」


 そうぽつりと俺が呟くと、丁度どこからともなく男たちの声が上がった。


「オージー! 空に何か浮かんでるぞ!」


「ああ? なんだありゃあ……」


 オージーたちの見上げる先には無数の大凧。


 もちろん、それを揚げたのはシノだ。

 まったく、よく揚げている最中に見つからなかったもんだと感心する。


「ほお。これは圧巻だな。こんな光景は中々拝めないぞ」


「すっごーい! ねえねえ、家畜のお兄ちゃん。なにこれー」


「これは凧だよ。俺の生まれた国では年の始めにアレを空に飛ばして遊んだりするんだ」


 もっとも、どこぞの忍者はアレに張り付いて空を飛んだりするんだけどな。


「おいおい! まさか、あれに隠れてるんじゃ無いだろうな!?」


 オージーは気付いた様だ。


 当然あれに隠れてるに決まってる。


 あの凧には袋がそれぞれくくり着けてあり、猫の姿のシノが入ってるのだ。


 そして、もちろん正解は一つだけ。


「うわっ。ツバサさんこんなのどうすれば良いんですか……」


「なあに。どこぞに飛んで行かれても困るから、縄を木に縛ってあるからな。一つ一つ手繰り寄せて確かめれば良いんだ」


「絶対間に合わないじゃ無いですか。終了間際でそんな事させるなんてえげつないです」


 ロリーが顔をひきつらせてげんなんりして見せる。


 そんな顔をしてくれるのなら、勝てそうか。

 だが、これで終わりじゃあ無いんだぜ?


「おい! あれを早く引きずり降ろせ!」


 オージーは諦めなかった。

 絶望的な状況にも拘わらず男たちに指示を飛ばす。

 どうやら、人海戦術で打開するつもりらしい。


 意外にも、無数の大凧を目の当たりにして、呆けていた男たちは我を取り戻し、大凧の縄を辿ってそれが結ばれた木に向かって駆けていく。


 中身はゲスいのに指揮の才能はある様だ。


「だがそう簡単に大凧を降ろせると思ってるのかね」


「ツバサさん、まだ何かあるんですか?」


「あるぞ? 何せ俺の策は天地二段構えだ!」


 残り時間は三分。

 男たちはようやく凧の繋がれた木の根元にたどり着こうかといったところ。


 そこで、男たちの悲鳴が上がる。


「ぎゃああああ? なんじゃこりゃあ!?」


「地面が抜けた! おい、気を付けろ! 落とし穴だ!」


 男たちは腰までずっぽりと地面にはまり動けなくなったのだ。


「ちょっと。落とし穴まで掘ったんですか?」


「いや、意図して落とし穴を掘ったわけじゃあ無いんだよ。あれは副産物だ。俺も前にはまった」


「あっ、ラビちゃんが穴を掘ってるんだ!」


 そうラビが穴を掘っているだけ。

 当のラビは地中を掘り進み逃げ回っている。


 そして、オージーはそれにも気が付いた。


「落とし穴……。あのウサギ娘か。てことは、この無数に空いた穴のなかに……」


 まだ諦めずに探すのか?

 いや……。


 今度ばかりはヤル気も振るわなかったらしい。

 オージーはへたんと、腰が抜けたかのように尻餅をつくとうなだれてしまった。



 そして。


 ゴォォォン……。


 鐘の音が辺りに響く。


 隠れん暴が終わったのだ。




 隠れん暴が終わると盤は消え、だだぴっろくて、殺風景な洞窟の姿を取り戻した。


 そんななか、やさグレたオージーの声はいささかよく響く。


「はっ! やってられるか!」


 これから、女の村の人たちが勝利を喜び合おうとしたところでこれだ。


 なんだか、微妙な空気になってしまった。


「いいのかほっといて。なにしでかすかわからんぞ」


「放っておけ。何もできやしないさ。ガキなんだあいつは。顔ばっかり老け込んで、中身はからっきし成長しない。だから嫁のなり手がいないんだ」


「そうかい……。ん? どういう事だ? 負けたら女の村の人たちは強制的に嫁がされるんじゃあなかったのか?」


 女の村が勝ち続けてるなんて話は聞いてないしオージーにも嫁がいたことぐらいあるはずだ。


「嫁には行くが、選択権は女にあるんだ」


「なんだそう言うことか。じゃあ、キツネ牧場って言うのも」


「それはオージーの戯言だ」


 どうやら、この隠れん暴は一風変わったお見合いの様なもので、殺伐としたものではないそうだ。


 そうすると、誰にも選ばれないオージーは可哀想な奴なのかも知れない。


 俺は同情の眼差しをオージーに向ける。


 ゲシッ、ゲシッ……!


「なあ、本当に良いのか? 神さまをげしげし蹴り始めたぞ」


「よ、良くはないですけど、神さまは寛大ですから、八つ当たりぐらい受け止めてくれるハズです」


 本当かよ。

 でも、確かにされるがままにされてる。


 いや、いい加減やめさせなきゃダメだろう。


 俺は、狂ったように神さまを蹴りつけるオージーを止めようと近づいた。


 しかし。


 じゅる……。ずちゅるるる……。


「ぎぃやあああああ!?」


 寛大な神さまもオージーの行いは看過できなかったらしい。オージーの体は神さまの体にぬっぷりとめり込んだ。


 まるで食べているかの様に見える。

 ……。

 食べてないよな……?


 オージーは、必死に這い出ようともがき、俺の姿を見付けると。


「たっ、助けてくれ……」


 助けを求めてきた。


 いったいどの口でそんな事を乞えるのだろう。

 そもそも、こんなの相手に出来んわ。

 それこそ神に祈るしか無い。


 だが──。


「来るのです……」


 例の如く、ラビがお耳を立てつつ、凛として新たな介入者の接近を告げた。


「ラビ。いったい何が来るんだ?」


 ラビは目をぎゅっとつむり、「むむむ……」と唸りだす。

 そして、突如空に向かって高々と腕を伸ばすと宣言する。


「上なのです!」


 キラッ。


 ソレは流れ星の様に一筋の光を宙に残すと落ちてきた。


 ピンクの巨人。

 テカテカと光るヌメリ気をまとったボディ。


「ンガー!」


 そう地球外生命体さんである。


 いやいや。

 いやいやいや、どうやってここに来たんだよ!

 ここは洞窟の中で、外界とは隔絶されてるはずなんだけど?

 気のせいか、一瞬天井に城なしが見えた気もしないでもない。


 しかも、ソレだけじゃあない。


「フゴッ……!」


 果ては、コダベケスジュニアまで、地球外生命体さんの頭に乗ってやって来た。


 正義の味方のつもりか。


 でも、正義の味方もオージーなんぞ助けたがらないだろうに。


「ンガー!」


 いや、暴れたいだけか!

 強敵と戦うの好きだもんな。


 当然こうなればツバーシャも加わるんだろう。

 もう、収拾着かんわ。


 そう思ったがツバーシャの反応は予想外のモノだった。


「イヤよ。何だか見た目が気持ち悪いもの」


「神さまを気持ち悪いとか言ってしまうんかい」


 ツバーシャ不参加の戦いは互いにヌメった体では決着は着かず。


 日が暮れるまで戦いは続けられた。



 そして明くる日。

 ため池の設置は済んでいるし隠れん暴も終った。

 そんなわけでこの村とはお別れだ。


「ラビちゃん! またね!」


「ファミちゃん! またなのです!」


 二人は湿っぽい別れになるかと不安だったが、意外にあっさりとしたものだった。


「ラビ。いいのか? もうちょっとこう、何かあるんじゃあないか?」


「どうせきっとまた城なしはこの上を通るのです!」


「なるほど。そうかもな……」


 結構な早さで世界を回っているんだ。

 それも間違いじゃあないだろう。


 俺たちはそれで村を後にした。


 しばらく歩いたところで、キツネの鳴き声が聞こえくる。


「キツネ獣人の村にキツネか」


 互いを見ていったいどんな思いを馳せるんだろう。


 そっと振り返ると一匹のキツネがこちらを見ていた。


 だがそこにあるはずの村はない。


 これはいったい……。

 まさか、俺たちは初めから化かされて──。


「ご主人さま? どうしたのです?」


「ううん。何でもないよ。さ、城なしに帰ろう」


 ラビたちに悟られぬよう俺はそそくさと、一番前を歩き出した。

九章城なしまとめ

 施設

 ・かまど

 ・トイレ

 ・トイレ:お客さん用

 ・忍者ハウス

 ・壺ぶろ

 ・コンポスト

 ・城

 ・ぷちラビの浮き島


 家畜、魚

 ・すずめ

 ・ニワトリ

 ・ヤマメ

 ・サケ

 ・イワシ

 ・サンマ

 ・マグロ


 畑など

 ・さつま芋の壺畑

 ・大豆の壺畑

 ・米の壺田んぼ

 ・シイタケ

 ・オクラの壺畑

 ・ポップコーンの壺畑

 ・ウコンの壺畑


 果樹など

 ・バナナ

 ・サルナシ

 ・ヤマグリ

 ・竹

 ・クルミ

 ・お茶

 ・パイナップル

 ・オレンジ

 ・白桃new!!


 その他

 ・城なしの子供『城なち』

 ・水源

 ・川:トイレ直行

 ・川:池通過

 ・川:サケ用

 ・海

 ・池

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