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望郷星98
「結婚を前提に付き合って下さい」と僕は酔いに任せて彼女に切り出した。
策を講じる事なく僕は酔いに任せて彼女に切り出した。
「結婚を前提に付き合って下さい」
彼女は意外な顔付きをして言った。
「えっ、貴方には好きな人がいるのに、いきなり結婚を前提にですか?」
僕は上気した顔で苦笑いしてから答えた。
「いや、だから僕は器が小さな男だから、友達の恋人を略奪する事なんか到底出来ないのですよ。分かって下さい」
彼女がけだるい感じで微笑み尋ねて来た。
「私は代用品ですか?」
僕は機転を効かせて答えた。
「器の小さな男では代用品は入りませんか?」
彼女が思わず甲高い声で高笑いしてから言った。
「面白い事を言いますね。私は代用品としてそんなに大きな器に見えますか?」
僕は頷き答えた。
「大いに見えますね」




