望郷星94
「まあよくある話しなのだけれども、私があんたの身の周りの世話何でもして上げちゃったから、あんたはマザコンになったのよ。だからそれは私のせいでもあるのだけれども、私は何にも心配していないのよ」と母さんは言った。
しかし。
成美ちゃんの村瀬に対する悲しい恋心は多次元宇宙に蔓延していて、複合同時多発的的存在であるにも関わらず、村瀬への思いに満ち溢れている。
それは凄い事だと僕は思う。
僕には到底真似が出来ない。
成美ちゃんはどんなに村瀬に虐げられても、諦めずその慕情を捨てやしない。
諦念など持たずに恋心をひたすら貫いている。
それに比べて僕の不甲斐なさは一体何だろうか。
そんな思いを内に秘めつつ僕は母さんに尋ねた。
「俺は意気地が無いからマザコンなのかな。母さん?」
母さんが一笑してから答える。
「まあよくある話しなのだけれども、私があんたの身の周りの世話何でもして上げちゃったから、あんたはマザコンになったのよ。だからそれは私のせいでもあるのだけれども、私は何にも心配していないのよ」
「何故心配していないのだ、母さん?」
再度一笑してから母さんが答えた。
「あんたはいっちょ前に、ちょくちょく酒席を設けて女を口説いているじゃない。一人で女を口説けるマザコンは言わばマザコンマスターだから、私はちっとも心配なんかしちゃっいないのよ」
僕は自嘲ぎみに苦笑いしてから言った。
「そんなものかな?」
「そんなものよ」




