望郷星93
正直怖いと僕は思った。
だがと僕は考える。
無数の陽神の分離体として僕は存在し、不完全な瞑想装置もどきとして僕は多次元宇宙に同時多発的に拡散しているのだが、それを各個制御出来ていないので、僕の分離体達が何処で何をしているのかを全体的に把握は出来ていないのが現状だ。
そして今現在僕の意識はこの陽神体に膠着して存在し、安らぎを求めて止まない状態なのだが、他の同時多発的複数陽神分離体は尽きせぬ成美ちゃんへの恋心を果たすべく、村瀬との闘いに挑んでいるのかもしれないのだ。
そのカオスの坩堝の中での激烈なる闘いに敗れれば僕は破滅してしまい、予言通り絶対死を迎える定めが待ち受けている。
正直怖い。
その恐怖を振り払うべく、僕は束の間の安らぎを求めて母さんに話しかける。
「母さん、俺があの酒飲み友達と一緒になると言ったら、母さん寂しくはないのかい?」
母さんがせせら笑い言った。
「あんたのマザコンが治り、親離れするならば母さん大助かりよ。どうぞどうぞと言いたいわね」
「俺ってそんなにマザコンなのかな?」
母さんが鼻で笑い言った。
「それこそギネスブック級よ」
僕はジョークで切り返した。
「世界一のマザコンならば勲章ものじゃないか?」
母さんが苦笑いしてから言った。
「張りぼての勲章のね」




