望郷星9
「俺達は光り輝く恒星の同時多発的群星になれなかった瞑想装置もどきだったのならば、それを邪魔したのは俺の母さんに対する慈しみと言うか慕情なのか?」と僕は田村に尋ねた。
何とか同士討ちを避けたいという願いを込めて、僕は田村に問答を仕掛けて行く。
「つまり陽神の無限大同時多発的宇宙増殖蔓延は絶対死の概念からどんどん遠ざかる、言わば仙道が目指す不老不死の無限大体現となり、その同時多発性の潰滅は、人間存在への矮小回帰となり、絶対死への可能性を高めるわけだな?」
辛そうに息をつき田村が答える。
「そうだ。宇宙に蔓延する同時多発性増殖瞑想装置は言わば不滅の群星と言えるからな。その不滅の輝きは多次元宇宙に在って正に不老不死の神と呼ぶに相応しい存在であり、その同時多発性の潰えた瞑想装置は瞑想装置とは言えず、暗黒のワームホールと同質の絶対死を迎え、光りは未来永劫潰えるわけだ」
僕は肩を落として答える。
「俺達は光り輝く恒星の同時多発的群星になれなかった瞑想装置もどきだったのならば、それを邪魔したのは俺の母さんに対する慈しみと言うか慕情なのか?」
田村が眉一つ動かさずに答える。
「そうだ。完全なる瞑想装置になるには、情け無用非情さだけが必須項目となるからな」
僕は反論した。
「だがそれは矛盾しているではないか。俺達はやがて正気を失い、狂って同士討ちをしようとしている情け無用状態なのに、相矛盾して絶対死を迎えようとしているではないか?」
田村が頬を引き攣らせ冷笑し答える。
「それとこれとは話しが別ではないか。矛盾と反矛盾が重なれば、そこには無しか残らない道理と同じく、俺達の瞑想装置になる目は潰えて行くのさ」
暴言とも言える田村の論法に僕は顔をしかめてから反論を重ねる。
「そんなのは詭弁だ。全く論理立ってはいないじゃないか!」
田村があからさまな悪意を込めて言った。
「詭弁こそが、この惑星に在っては大いなる正論になるのさ」