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望郷星89
「成美ちゃんを恋慕するもう一人の自分がいて、それを狂った自己同一性略奪障害の僕が抑圧しているから、僕は精神病だと貴女は言いたいのですか?」と僕は言った。
僕は胸から丹田へと燃える気を落としてから言った。
「誘導尋問ですね。でも僕の心の問題に照らし合わせた上で、僕が狂っているというのは明らかな偏見だし、それはどうあっても認められませんね」
彼女が柔和に微笑み言った。
「恋狂いをして、貴方は略奪愛を諦め、その分意識野が分離し自己同一性障害を来たし、成美ちゃんへの慕情を意地になって否定しているのではありませんか?」
僕はこの時点で陽神分離のイメージを思い浮かべ、それをひた隠し答えた。
「成美ちゃんを恋慕するもう一人の自分がいて、それを狂った自己同一性略奪障害の僕が抑圧しているから、僕は精神病だと貴女は言いたいのですか?」
彼女が柔らかく微笑みながら言った。
「その自己同一性障害の乖離が貴方のエキセントリックでエスニックな魅力の原動力になっていると私は思っているのですよ」




