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望郷星76
「エスニックでエキセントリックですか。何か褒められているのか、けなされているのか分からない言葉ですよね?」と僕は言った。
彼女がアルコールで潤んだ眼で僕の顔をしげしげと見詰めてから言った。
「でも貴方の心を占有しているのは酒ばかりではありませんよね。こんな酒席でも何となく心ここに在らずで。それがエスニックでそこはかとないエキセントリックな感じを醸し出していて可愛いらしいのですが」
僕は惚けるように注視されている視線をそれとなく逸らしてから答える。
「エスニックでエキセントリックですか。何か褒められているのか、けなされているのか分からない言葉ですよね?」
彼女が苦笑いしてから弁解するように言った。
「気に障ったらごめんなさい。でも常に心ここに在らずの人なんて稀だから、それが逆に貴方の魅力になっているのかもしれないし。女と言うのは無視されると逆にむきになり、入れ込む生き物ですから」
僕はごまかすように口にグラスを運んでから言った。
「そんなものですかね。僕には無視しているつもりなんか無いのですが」
彼女が念を押すように言った。
「そんなものですよ」




