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望郷星74
「そうですね。寂しくないと言ったら嘘になりますから」と彼女は言った。
瞑想装置に含みを入れ抵触しているようで、的を射ていない。
会話をするのがもどかしい。
僕なりに洞察瞑想をしつつ感知した事柄は、成美ちゃんではなく少女でもない、増してや何かしらのメッセージ性も感じられない。
それだけだ。
慈しみや愛から掛け離れた無味乾燥としたアカデミックな話しには善意も感じられなければ真逆の悪意も感じられない。
意味が伝わって来ないのだ。
僕は探りを入れるのを中断し思い切って尋ねてみた。
「君は成美ちゃん?」
彼女はきょとんとしてから答える。
「成美ちゃんとは誰ですか?」
僕は再度惚けて言った。
「いや、知らなければそれでいいのです。しかし貴女は学識が豊富ですね?」
彼女が答える。
「ええ、暇ですから。ネットサーフィンしながら色々考えているのです」
僕は尋ねた。
「先々の生活に対する不安からの知識欲ですか?」
彼女が答える。
「そうですね。寂しくないと言ったら嘘になりますから」




