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望郷星60
「それは俺にお見合いをしろと言っているのか、母さん?」と僕は言った。
母さんが言った。
「あんた、私が狐の嫁紹介して上げるから、会ってみる?」
僕はわさどかまをかけるように答える。
「え、母さん本当に俺に狐の嫁を紹介してくれるのか?」
母さんがひとしきり笑い言った。
「知り合いの娘で未亡人で行かず後家の狐女がいるんだよ。あんた、その女と会ってみるかい?」
「それは俺にお見合いをしろと言っているのか、母さん?」
母さんが一声笑い言った。
「私はそんな古風なお見合いなんかしろとは言ってないよ。私が言っているのはあくまでも紹介。この意味分かるわね、馬鹿息子さん?」
僕は惚けて答える。
「妖怪変化の狐の嫁とのお見合いだろう、母さん?」
母さんが鼻で笑い言った。
「そうだよ。狐と狸の化かし合い結婚前提お見合いさ。してみるかい?」




