望郷星50
その絶叫の粒子を田村がこぼさないようにビー玉の帽子で受け止め、おもむろにグラスに注ぎ、そのまま僕の複眼と乾杯した途端、そのグラスとしての緑色のビー玉が粉々に砕け散り、僕は黒い影に蹴られて吊橋から真っ逆さまに落下して行き、水が弾けるように巨大な噴水が上がった刹那、バーの深紅のカウンターに田村と並んで腰掛け、酒を飲みいみじくも言った。
僕にしか聞こえない足音が無数に聞こえ、僕は自分の逃げられないアガティスの葉としてのビー玉を内側と外側から複眼的に同時に見詰め、その分恐怖感が倍増するままに灯台の牢獄そのものとなりアガティスの葉の予言を破壊すべく絶叫を上げた。
その絶叫の粒子を田村がこぼさないようにビー玉の帽子で受け止め、おもむろにグラスに注ぎ、そのまま僕の複眼と乾杯した途端、そのグラスとしての緑色のビー玉が粉々に砕け散り、僕は黒い影に蹴られて吊橋から真っ逆さまに落下して行き、水が弾けるように巨大な噴水が上がった刹那、バーの深紅のカウンターに田村と並んで腰掛け、酒を飲みいみじくも言った。
「もうこのままこの安住の地にいたいな」
田村が無機質な口調で答える。
「しかしこんな風に酒を飲んでいる間にもお前はアガティスの予言通り何処の誰かも分からない輩に蹴られて死ぬのかもしれないのだぞ。それでもいいのか?」
僕は砕け割れたグラスを手の平の中で何気なく直し、元通りにしてから、今いる場所がやはりカオスの坩堝だと再確認してから言った。
「吊橋に戻り成美ちゃんと村瀬を救出しよう」




