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望郷星48

「だが一つだけ希望はあるぞ」と僕は生還に対する執念を燃やし、ギラつく眼差しで灯台を見上げながら言った。

森に入り、僕等二人は或は手を繋ぎ、或は肩を貸し合って、生還に対する執念を込めたギラつく眼差しで、目指す灯台を睨みつけながら一歩ずつ前進して行く。





田村がよろめき僕が手を取って倒れるのを防ぐと、田村が情けない顔をしていみじくも言った。





「例えばここでお互いに衰弱して、どちらかが絶対死を迎えたとしても、その死体を残った一人が吊橋に運び、以前のように投げて葬ろう。こんなところでお互いに犬死にするのは御免だしな。人間存在に戻ったならば人間としての葬られ方をされたいしな。お互いに…」





僕は田村に肩を貸しつつ答える。





「だが二人同時に犬死にしたら、どうする事も出来ないではないか」





田村が力なく頷き答える。





「それはもう仕方ないだろう。諦めるしかない。以前よりもこのカオスの坩堝は遥かに深度を増しており、経験則も全く無化して、ひたすら絶対死に誘う力を蓄えているからな」





僕はギラつく眼で灯台を見上げ苦境に抗うように言い放った。




「だが一つだけ希望はあるぞ」





田村が涎を一筋垂れ流してから尋ねて来る。




「希望とは何だ?」





僕はよろめきそうになるのを何とか踏ん張り言った。





「この森に入って迷路よりは灯台に近付いているし、ここの時間は俺達の細胞を劣化させる作用はあるが、流れてはおらず、夜は来ないから、暗くはならないではないか」





田村が泣き笑いの表情を浮かべ言った。





「そうだな。それが唯一、一握りの希望だな」

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