望郷星36
「しかしワームホールに飲まれたら、俺達は瞬時に絶対死を迎える事は明白ではないか。それでも助けるのか?」と僕は恣意的に田村に尋ねた。
理由は分からないが、僕及び田村の過去の記憶に空洞欠如分がある事を鑑みながら僕は田村に尋ねる。
「カオスの坩堝の中で俺にとっての過去はお前にとっての未来である事も鋭意考えられるわけならば、あのワームホールは狂暴そのものの瞑想装置になった成美ちゃんがこの世界に送り込んで来たものである事を考えると、それでも田村、成美ちゃんを助けるのか、どうするのだ?」
田村が冷徹な面持ちのままに答える。
「成美ちゃんは瞑想装置に肉薄している力を得て狂っているわけだ。だからこそ狂ったワームホールを無意識に誘導しているのならば、正気の成美ちゃんには罪は無いわけであり、それは取りも直さず論理的に考えて、助けるしか道は無いと俺は思う」
僕は恣意的に再度疑問符を投げかける。
「しかしワームホールに飲まれたら、俺達は瞬時に絶対死を迎える事は明白ではないか。それでも助けるのか?」
攻守ところを変えるように田村が微笑み僕に尋ねる。
「ならばお前は死ぬのが怖くて成美ちゃんや村瀬を見殺しにするのか?」
僕は我が意を得たりとばかりに否定した。
「いや、見殺しになんかしない。絶対に救出してみせる」




