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望郷星32
「あの悲鳴が成美ちゃんのものならば助けてやりたい…」と僕は再度言った。
田村が続ける。
「と言うよりは、カオスの坩堝の目まぐるしく変わる時間軸概念など完成された瞑想装置になろうとも予測不能だという事だ」
僕は恭しく頷いた後、反論する。
「でも田村、お前は一人の目覚めた者としての能力を取り戻したのではないか。さもなければ狂った時間軸概念など見通す事は出来ないだろう」
田村が言下に言って退ける。
「いや、それをも単なる第六感に過ぎないのだ」
「だが第六感の覚醒こそが目覚めの証拠ではないか?」
田村が再度首を振り答える。
「いや、第六感などあてずっぽうにすぎないだろう、違うか?」
僕は落胆し改めて尋ねる。
「これからどうすればいいのだ?」
田村がしげしげと僕を見詰め言った。
「逆に尋ねるが、お前はどうしたいのだ?」
「あの悲鳴が成美ちゃんのものならば助けてやりたい…」




