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望郷星308

僕が寂しさにふさぎ込んでいると、手を繋いでいる田村が冷静沈着に言った。

僕が寂しさにふさぎ込んでいると、手を繋いでいる田村が冷静沈着に言った。





「お前は何を寂しがっているのだ?」





僕は答えた。





「それは寂しくないと言ったら嘘になるだろう。今まで一緒にいてくれた家族が自分に見向きもしてくれなくなったら、田村お前は寂しくはないのか?」





田村が答える。





「それは寂しいが、だが会おうとすれば何時でも又会えるし、逆に言えばお前は瞑想装置となったのに、そんな寂しさを感じる優しい人間性を失わずにいられたのだから幸運ではないか。それにもう一つお前に取っては僥倖が有ったではないのか?」




僕は尋ねた。





「それは何だ?」




田村が繋いでいる手を強く握り絞め言った。





「お前は瞑想装置の完成体となったお陰で、村瀬や何処の馬の骨に蹴られて犬死にする事を免れ、予言を無化したではないか」





僕は駄々をこねるように田村に向かって言った。





「だが俺は人間性は辛うじて保持出来たが、相変わらず意気地無しで、こうしてお前と手を繋いでいない限り何も出来ない情けない瞑想装置だし、それを考えると先行きが心配でやり切れないのだ」





田村が微笑み言った。





「いいではないか。お前には俺がついているし、これから先何が有っても俺が助けてやるから安心しろ」





僕は泣き笑いの顔を作り尋ねた。





「意気地無しの瞑想装置でもお前は俺と一緒にいてくれるのか?」





田村が答えた。





「ああ、逆に言えば意気地無しだからこそ、狂暴にならずに済んだのだし、俺も同じく意気地無しだから、こうして手を繋いで温もりを分かち合っているわけだし。お互い様だろう」





僕は相変わらず泣き笑いの表情を崩さずに言った。





「田村、俺の手を離さないでくれよな」





田村が答える。





「お前もな」





そこに成美ちゃんが話しに加わって来た。




「私は馬鹿の一つ覚えですが、村瀬さんの得られるかどうか分からない愛を求めて行きます。二人とも元気でいて下さい」





田村が言った。





「成美ちゃんも元気でな。又会おう」




僕は成美ちゃんへの思慕を歯を食いしばって頑なに隠しつつ、田村の口まねをして、自分なりに精一杯の恰好をつけて応じた。





「又会おう、成美ちゃん」

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