望郷星305
「真理は定かではなく、望郷郷愁をしとねにして、まどろみ、ぼんやりと永遠遡航蔓延する事が真理か?」と田村は微笑み言った。
漆黒の闇を無数のプリズムが閃光の如くスパークする中、田村が言った。
「あの閃光スパークは夢の塗り替え作業が成されている証明なのか」
僕は答えた。
「ああ、それを俺は半睡しながら故郷として見ているのかもしれないな」
田村がいみじくも言った。
「真理など無いのが真理だと俺は思っていたが望郷感が真理ならば、俺達は何処の故郷に向かっているのだろうか?」
僕は倦怠感にまどろみつつ答える。
「数え切れない心の故郷なのかもしれないな」
田村が微笑み言った。
「無数にある故郷の何処に向かっているのだ。俺達は?」
僕は眠気を堪えて答える。
「在るが無い存在として、多次元宇宙に複数としての単数として蔓延している俺達に心の行き先などはなく、ここに在るがままに在る事が心の故郷の行き先だと思う」
田村が言った。
「ロゴスの徒然としてエロスから生誕し、カオスに埋没して行くのを在るが無いという複合的眼差しで見詰め、蔓延する事が瞑想装置の唯々なのか?」
僕は田村の手を握り絞め、けだるい感じで答えた。
「そうだ、田村、お前の推論は的を射ているのだと思う。真理など在るが無いが、無いが在るとして、その永遠遡航の蔓延こそが真理だから、俺は真理の中で定かではなく、ひたすらぼんやりとしていて眠いのだと思う」
田村が再度微笑み言った。
「真理は定かではなく、望郷郷愁をしとねにして、まどろみ、ぼんやりと永遠遡航蔓延する事が真理か?」
僕は頷き言った。
「ああ、だから俺はひたすら眠いのだ。田村、手を離さないでくれよ」




