望郷星299
「ああ、どうやらな。この空間は俺達の欠如分を埋め合わしてくれる空間でもあるらしいのだ」と田村はいつものように無機質な口調で言った。
僕は闇の中で声を頼りに田村の温かい手を握り絞めた。
手を繋ぎつつ田村が言った。
「ここはどうやらお前と以前行った無人島の海と酷似した場所らしい」
僕は驚き尋ねた。
「田村、お前無人島での事を思い出したのか?」
田村の心眼が恭しく頷き言った。
「ああ、どうやらな。この空間は俺達の欠如分を埋め合わしてくれる空間でもあるらしいのだ」
僕は田村の手を強く握り絞めながら尋ねた。
「お前はどうやって記憶を取り戻したのだ?」
田村が僕の手を握り返してから言った。
「それはお前の心の問題だ。成美ちゃんから聞いてくれ」
僕は命綱とも言える田村の手を離さないようにしつつ息をつき再度尋ねた。
「ここが無人島の海と同じような空間ならばワームホールの牙と言うか、鮫は襲って来るのか?」
田村がいつものように無機質な口調で答えた。
「ここは村瀬の悪夢の集積所だからな。それが邪悪な牙を剥いて襲って来るのさ」
僕は恐怖に怖じけづき喚き尋ねた。
「それはどうやって撃退するのだ、田村?!」
田村の代わりに成美ちゃんが優しい口調で言った。
「心配ありません。私の言う通りにして下さい」




