望郷星298
「くどい事を承知で言うがお前は何をなすつもりなのだ。今のお前はいたずらに破滅を急いでいるようにしか俺には見えないぞ」ともう一人の僕は僕を諌めた。
僕は苦し紛れに答えた。
「再度言うがそれはやってみなければ分からない道理だと思う」
「行き当たりばったりでは先が見えず不安感は増大するばかりではないか。田村とてお前と同じく決め手を欠く状態ならば、賭けに出ても誰も助けてはくれず正に孤立無援の状況ならば、救いなど無いではないか」
「だから賭けに打ち勝ち、村瀬を遠ざけて、人の心を出来る限り残すしか道は無いではないか!」
「決め手を欠く今、それをお前は為し切れるのか。為し切れなければお前達家族は破滅し、連鎖的に多次元宇宙にあまねく存在するお前の分身達も全員死滅していくのだぞ。それを承知で言っているのか?」
僕は深呼吸してから泣き笑いの顔をして苦しい反論を繰り返した。
「一刻を争う今、とにかく、一か八かの賭けに出て、例えば俺が破壊神となり、母さんや妻を結果として殺したとしても、表裏一体の理の中で逆ユートピアを希求標榜し、その悪魔性が裏返り、逆転して俺達は救われる事を信じ祈るしか無いではないか!」
「苦しい言い逃れだな。正に欠如分に翻弄され自信を持てないお前らしい言い逃れではないか」
僕は怒り心頭に喚いた。
「しかしこの局面を打破するにはやるしか無いではないか、違うのか!」
「くどい事を承知で言うがお前は何をなすつもりなのだ。今のお前はいたずらに破滅を急いでいるようにしか俺には見えないぞ」
「だが時間が無い事は事実ではないか!」
「その言葉が死に急いでいるお前を如実に象徴していると俺は言いたいのだ」




