望郷星296
「嘘と欺瞞性だけの愛は愛に非ず、破壊して正直に成美ちゃんを村瀬から略奪するべく瞑想装置の完成体となり、本音の部分で妻や母さんを破壊し、村瀬と対峙するべきではないのか。違うのか?」ともう一人の僕は問い掛けた。
「お前の愛とは何だ。それが矛盾して破滅への賭けとしての道標ならば、お前は村瀬と同じく単なる破壊神でしか無いではないか?」
「だから俺は賭けではない俺の真正の愛で村瀬の悪夢を塗り替えて見せる」
「お前の真正の愛とは愛してもいない成美ちゃんの分身を愛していると言う虚偽、欺瞞性か。ならばそれを愛しているから救って見せると賭けに出て、ここぞとばかりに破壊するのがお前の愛か?」
「俺は妻を愛している。だから救って見せる」
「嘘と欺瞞性だけの愛は愛に非ず、破壊して正直に成美ちゃんを村瀬から略奪するべく瞑想装置の完成体となり、本音の部分で妻や母さんを破壊し、村瀬と対峙するべきではないのか。違うのか?」
「俺は略奪愛など金輪際目論んではいない。俺が今なすべき事は俺共々破滅寸前の妻や母さんを助ける事だ。違うのか!」
「本当にそう思っているのか?」
「本当だ。これが俺の涙ながらの切なる願いだ」
「だがお前には自我に絶対の欠如分がある限り、お前の本来的な切望が何であるのかも分からないだろう。どうだ、違うのか?」
「この切望は俺が今在るがままの直感として感じている、俺の本来的な愛の所作切望だ。それに間違いはない!」
「ならば問う。お前は何の想念を以って、破滅を回避する美しい思念で村瀬の悪夢を塗り替えるのだ。その想念とは何だ?」
言葉を失い絶句した僕にもう一人の僕が再度執拗に問い掛ける。
「それも口から出任せ、虚偽としての欺瞞でないのならば、明解に答えてみろ?」




