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望郷星289

「万全を期して、期が熟するのを待つしかないではないか」と田村が苛立つ僕を諌めた。

僕は思った。




悪夢をいくら虚空の懐に入れようが、それが現実に村瀬の悪夢を逆流変換しなければ何も意味は無い。





田村も同じような段階にあるのならば、それは取りも直さず僕等の夢見術の拙さを証明している事となり、拙さはそのままミスマッチを冒す因子となるわけだ。




だが先に進まないからと言って、いたずらに焦っても墓穴を掘ってしまうだろう。




村瀬が全くこちらを嘗め切っていている今が絶好のチャンスなのだが、悪夢を逆流変換させる方法が分からないのだから、どうする事も出来ない。





だが虚空のポケットと言うか懐には確実に村瀬の悪夢が蓄積されているのだが、もうこれで良いのではないかという思いと、いやもっと貯めなければならないのではないかという思いが交錯し迷いを形成している。




そして。





隠密行動がいつ村瀬に発覚するかもしれない今、己の稚拙な夢見術の状況現状推移に、僕は苛立ち、臍を噛んでいるそんな状態だ。





そんな折り、再度田村から通信瞑想が届き、田村が僕の精神状態を見透かすように言った。





「とにかく焦りは禁物だ。村瀬に気取られないように奴の悪夢を細心の注意を払って採集して、慎重に己の領域である虚空の懐に入れ、期が熟するのを待つしかないと思う」





苛立ちつつ僕は尋ねた。





「期は本当に熟するのだろうか?」






田村が言い切った。





「万全を期して、期が熟するのを待つしかないではないか」

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