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望郷星287

「この子は生きたいのよ。たがら私も絶対に死なないわ。この子を無事に産んで育て上げて見せるわ」と妻は気丈に言った。

母さんの看病疲れと心労で妻も切迫流産の状態となり、急遽病院搬送され何とか事なきを得た。




家に帰って来てベッドに横たわり、妻が気丈に言った。





「この子は生きたいのよ。だから私も絶対に死なないわ。この子を無事に産んで育て上げて見せるわ」





僕は泣き笑いの表情を作りつつも意気地を以って妻を励ました。




「そうだ、その意気だ。生まれて来る子に罪は無いからな。この子が産まれ力強く生きられるようにお前も負けずに頑張らないと」




妻が涙ぐんだのを指で拭い再度気丈に言った。





「泣いてなんかいられないわよね。私には産まれて来る子の命を護る義務があるのだから」



僕も涙ぐむがその涙を手の甲で拭い言った。





「そうだな、俺にもこの子を護る義務があるのだから自滅なんかしてはいられないよな」




妻が己を叱咤するように言った。




「これは家族全体の問題なのだけれども、各自、己との戦いでもあるのよ。威されて自滅したら一巻の終わりだから、生きようとする意気込みを捨てた時が負けなのよ。絶対に」




僕は血走る眼をぎらつかせながら言った。





「そうだな、病気と同じで、もう駄目だと観念して己自身の戦いに負けたら終わりだからな。絶対に気持ちが怯んではいけないのだよな」





妻が一度深呼吸をしてから言った。




「そうね。絶対に負けないように頑張りましょう。あなた」





そう言って妻は瞼を閉ざし、微笑みながら眠りに就いて行った。

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