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望郷星283
僕は思った。村瀬は田村の夢見も封じていない可能性がある事を。
音無しの構えを取りつつ、敵に気取られないように余り近付くのを避ける。
これが隠密行動の極意となる。
物を考えるにしても、一旦己の夢に帰還し、安全地帯で考えるようにしないと駄目だ。
その安全地帯で僕はそぞろ考える。
村瀬は田村の夢見も封じていない可能性がある事を。
僕らを嘗め、己の絶大なる力に酔いしれて、殺戮に狂喜している村瀬の現状ならば、これは大いに有り得ると僕は思った。
それならば夢見をしながら田村にコンタクトしてみれば良いのだが、これは村瀬に気取られてしまう確率が高いので迂闊には出来ない。
僕は臍を噛みつつ想いを巡らして行く。
隠密裡に田村とコンタクトが取れれば、対村瀬戦略を二人で協調して練り上げ、俄然戦意を鼓舞出来るに違いないと。
だがこの項目は後回しにして、ここは村瀬の無差別殺人としての悪夢を採集する事に全力を尽くすべく、僕は再度隠密行動に移った。




