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望郷星27
僕の田村を追跡する足音がそのまま田村の笑い声に聞こえ、僕はうずくまり声を上げて慟哭し、立ち上がって自己憐憫するように笑い転げた。
走りながら僕の心は母さんのパラソルの鈴の音を笑った田村に対する激しい憎悪で一杯となる。
それはそのまま瞑想装置へのやんごとない帰依を意味するので、僕は片手で脳味噌としての細胞分裂したスプーンでその憎悪をそっとすくうように走りながら田村を思いやり喚いた。
「田村、俺とお前は友達だろう。だから俺はお前を殺す!」
田村が白い血液としての僕の毒を帯びた声帯分裂を聞いて、それを愛でるように狂った笑い声を飛行させ、僕の黒い心の滑走路に不時着させつつ答える。
「俺は笑ってはいないぞ」
僕は再度怒りに任せて怒鳴る。
「笑ったではないか、だからお前は俺としての成美ちゃんを風車を回すように馬鹿にし侮辱したから殺す!」
「俺は笑ってなどいなぞ」」
僕は声を限りに喚いた。
「田村、お前の時計を殺す!」
僕の田村を追跡する足音がそのまま田村の笑い声に聞こえ、僕はうずくまり声を上げて慟哭し、立ち上がって自己憐憫するように笑い転げた。




