望郷星263
「あんた何苛立っているんだ、そんなんじゃ夜も眠れないだろう?」と母さんが僕を気遣い言った。
身重の妻と病み上がりの母さんを気遣い、とにかく目の届くところにいて欲しいと我が儘を承知でごり押しをして、僕ら三人家族は寝室を共にした。
居間に三組の布団を敷き僕が真ん中になり寝る態勢なのだが、僕は恐怖に神経が立ってそぞろ眠れなくなってしまっている。
自分が寝ている時に妻や母さんが襲われたら、自分には助ける術は無い。
それが不眠症を形成し、僕は神経を蝕まれ、臨界点に達しており、発狂寸前で知らず知らずまどろむように寝てしまった。
夢うつつの中で母さんと妻が言い争い、その声が村瀬のワームホールの点と重複して、二人の身体を恒星爆発させ、肉片と細胞質が混じったフレアが僕の網膜を焼くように打ち、その激痛に僕は絶叫を上げてしまい、目を覚ました。
そんな僕に向かって母さんと妻が心配顔をして順次言った。
「どうした、悪夢でも見たのか、馬鹿息子?!」
「大丈夫、あなた?」
僕は胸の動悸を手で抑えつつ、切れた息を喘ぐように調え、額の脂汗を拭い気もそぞろに応じた。
「大丈夫だ、悪い夢にうなされたみたいだから、心配ない」
母さんが言った。
「あんた何苛立っているんだ、そんなんじゃ夜も眠れないだろう?」
僕は肩で息をつき言った。
「大丈夫だ、母さん、心配無い」




