望郷星259
何度電話をかけても母さんが出ないので、僕は不安にかられて全身がわなわくように震え声を限りに叫んだ。
田村がいない。
田村の実家にも鋭意問い合わせてみたのだが、ふらりと一人旅に出たまま戻って来ないとの返事であり、家族はいつもの事なので心配すらしていない有様だった。
村瀬の術中に嵌まり、田村は次元相の違う惑星に飛ばされ、僕と同じように孤独と不安にかられているに違いないという確信を抱き、僕は途方に暮れた。
村瀬の言葉通りならば、次は母さんや妻がターゲットになるに違いないと考えると、僕はいたたまれない不安にかられて、踵を返し自宅へと向かい走り出した。
途中電車の中で田村にコンタクトを取るべく通信瞑想を試みたがやはり徒労に終わった。
不安に胸の動悸が高鳴り、腋の下を冷たい汗が滲み出て滴って行くのを、僕は小刻みに震えながら感じつつ、力なくため息をついた。
不安と憔悴感に臨界点を越えてパニック発作を起こす予感がする。
僕は涙ぐむのを何とか堪え目的地の駅に着いて、足早にドアを潜り、エスカレーターを回避して階段を苛立たしく駆け上がり、自宅へと急ぐ途中、母さんに再度連絡を入れたが、母さんが出ない。
何度電話をかけても母さんが出ないので、僕は不安にかられて全身がわなわくように震え声を限りに叫んだ。
「母さん!」




