望郷星253
双方共に老人さながらに消耗衰弱しているので、止めすら刺せず殺し合いにもならない。
やはり止めを刺せない。
血みどろになり、連打を繰り返しいくら殴り合い取っ組み合っても、双方共に消耗衰弱し非力になっているので、渾身の力を振り絞っても止めをお互い刺せない。
それどころか殴る力も加速度的に衰えて行き、数を打てば打つ程疲労度が増し、お互いまともに殴る事も蹴る事も出来なくなり、僕は血へどを吐いた後、脱力しへたるように倒れ込んでしまった。
田村も僕と同様に疲労困憊の有様で脱力するままに倒れ込み、切れた息を調えながら喘ぎつつ言った。
「だ、駄目だ、止めを刺す力が無い」
僕はどんよりと曇り、のしかかるような空を息を切らしながら血走る眼で見詰め言った。
「殺し合いにもならないし、これからどうするのだ?」
田村が辛そうにいたたまれない感じで答えた。
「却って衰弱度が増し、これじゃまともに歩く事すら出来なくなっちまったな」
体中が小刻みに痙攣するのを感じながら僕は再度言った。
「これからどうするのだ、田村?」
老人さながらに息を切らす間を置いてから田村が言った。
「順番に舌を噛み切って自害しよう」




