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望郷星252
「いいぞ、田村、俺を殴り殺してくれ」と僕は田村に言った。
泣き笑いの顔付きをして僕は言った。
「いいぞ、田村、俺を殴り殺してくれ」
田村が涙ぐむ間をそぞろ置いてから、渾身の力を振り絞り正拳突きを僕の頬に叩きつけて来た。
僕は重い衝撃と鈍痛を感じ取り思わずうめき声を上げながら真後ろに倒れ込み、頬を押さえてのたうちまわった。
そんな僕に田村が素早く馬乗りになって来て、容赦ない連打を僕の頭部に浴びせつつ、泣きながら訴える。
「お前も俺を殴れ、俺もお前と同じく一人取り残されて自害する勇気は無い、だから殴ってくれ!」
その悲痛な訴えを聞いて僕は頭が真っ白となり、あらん限りの声で雄叫びを上げ、田村を巴投げで投げ飛ばし、倒れ込んだ田村に逆に馬乗りになり、泣きじゃくりながら正拳の連打を渾身の力で繰り出して行った。




